人類に、打つ手はあるか。

読みやすい絵本調のお話の中に、思わず考えさせられる指摘が込められています。
これを読んで、貫井徳郎の『乱反射』というう小説を思い出しました。
ある子供が死ぬのですが、親が「なぜこの子は死ななければならなかったのか」を調べていくと、ひとつひとつは大した罪ではない「これぐらいいいだろう」と思ってやったことがいくつも複雑に絡み合って起きた事故で、結局誰にも明確な罪が問えない、という内容です。

タイタニック号ほどの豪華客船になると、操舵室で舵をきっても、すぐに船の向きは変わりません。船体が大きすぎるし、命令が伝わるにはいくつもの過程を経なければならないからです。
高度に分業され、ひとつの現象を一体何が起こしているのか追及できない社会。私たちは今、実際にどうしたら世界の構造から来る悲劇を回避できるか、考えるべき時に来ているのでしょう。

これはそういう、大人のための絵本であると言えるでしょう。