もしも好きになった人が、自分の親友だったら……
そんなモノローグから始まるストーリー。
これが、ただの甘いだけのイチャイチャ系ガールズラブなら、すんなりとその感情を受け入れられてしまうのだろうけれど、この作品はその感情の否定で始まります。
主人公の優は親友の理絵のことが同性であるにもかかわらず、恋愛対象として好きになってしまう。
ところが、優はかつて、同性からの告白に困惑し、その感情が理解できず、間違っていることだと思ってしまい、それどころか、その相手が自分を静的な目で見ていたことに、嫌悪感さえ抱いてしまっていた。
だからこそ、優は自分の感情に苦悩し、葛藤しながら、それでも理絵との関係を「親友」として大切にしていきます。
こうした相手との距離感をテーマに描こうとすると、どうしても重苦しくなってしまいがちなのですが、この作品は文体も描写も良い意味でテンポよく、かといって、優と理絵の心のすれ違いが絶妙で、二人の成り行きにあれよあれよという間に、最終話まで読み進めてしまいます。
同性同士の恋愛感情、異性との友情。優の内面を揺蕩う、ほろ苦い青春時代の心理を、ときに鋭く、ときにコミカルに。そして、ときに感情がおもむくままに任せた激しさで描き出すこの作品は、ガールズラブの衣をまとった、ヒューマンドラマといっても大げさではないでしょう。
甘々なラブコメやガールズラブは好きだけど、ちょっと違うテイストも試してみたい。
そんな人にはぜひおすすめします。
情緒深い人間味に満ち満ちたお話でした。恋を通して人は成長していくといういわゆる世間論を優しくなぞっていく、ある意味王道を行く作品ともいえるかもしれません。
挫折であったり、葛藤であったり情動であったり嫌悪感であったり──人間が誰しも手放せない感情を見事に表現されていると思います。
主人公の目を通してみる世界の移り変わりがなんとも素晴らしい……
また、作者様の文章はとても読みやすく、世界観だったりストーリーだったりがよくよく伝わってきました。綺麗に纏まっているなぁとも感じました。
大変良い百合、ご馳走様でした。筆者様の益々のご活躍をお祈りいたしまして、これにてレビューとさせていただきます。