番外編

「Щедрик」(Щедрик) ウクライナ民謡

Q.なんて読むのか。

A.シュチェドルィック(「ルィッ」の辺りは巻き舌っぽい。Google翻訳先生発音参照)


タイトルでピアノ曲とうたってるが、本当にピアノ曲しか含まないと思ったのか?とでも言いたげな所業をしている自覚はある、うん。

でもめっちゃメロディ綺麗で、ピアノで弾いても綺麗なんですよ。


正直事実として浸透していないだけで、昨今のネットの海の住人の結構大きな割合の人が聞いたことがあるメロディのはずである。

なんでかというと「旧支配者のキャロルの原曲の原曲」なのである。メロディも変わってない。

北京五輪の女子フィギュアのウクライナの子もこれですべってましたね。


えー、「旧支配者のキャロル」の原曲が「鐘のキャロル(Carol of the Bells)」。

「鐘のキャロル(Carol of the Bells)」自体が、この「シュチェドルィック」のメロディに元の歌詞とは全く関係ない歌詞を付けた曲(でも民謡元にして作曲してくれとの受注を受けた結果らしい)。

しかし、メロディは変わってないので、つまるところ、このたたみかけるようなメロディがどんどんクレッシェンドで迫ってきて、雪崩なだれるように高らかに歌い上げてまた弱くなって終わるというメロディの構成は変わらんのである。

個人的には神秘的なメロディがそんな動きするから、本当に怖気おぞけが走るほど美しいと思う。


「鐘のキャロル(Carol of the Bells)」はクリスマスキャロルとして作られたけど、この「シュチェドルィック」は今は新年に歌われる曲。

ただ、たぶん本来は春に歌われたはずの曲。

いやだって、原歌詞にツバメが出て来るから、ウクライナにツバメが行くのは何月?って考えると少なくとも今の新年よりも春よりの位置。

というわけで、原歌詞をいろいろ調べて、頑張って訳してみるとこんな感じ。


 豊穣の夜、豊穣の夜、新しい年の祝い歌

 ツバメが一羽、家に来りて主人を呼んで歌いだす

 「いらっしゃい、いらっしゃい、ご主人。

  羊小屋をごらん、雌羊が生んだ、子羊を生んだ。

  なんてすばらしい羊だろう。

  すばらしい羊でご主人はお金持ちになるだろう。

  なんてすばらしい羊だろう。

  すばらしい羊でご主人はお金持ちになるだろう。

  お金持ちにならずとも、ご主人のとった実りは良い飼い葉となるだろう。

  黒いまつ毛の素敵な嫁さんもらうだろう」

 豊穣の夜、豊穣の夜、新しい年の祝い歌

 ツバメが一羽、家に来た。


……よ、予祝よしゅく……豊穣の予祝よしゅくでは?

※説明しよう!予祝よしゅくとは!

 祭事とかそのために使われる飾り物などに含まれる意味合いで、「あらかじめ望んだものを再現し、それを祝うことで祈りの具現を要請する」ものである!

 お正月の飾り物の繭玉まゆだまとか餅花もちばな、他に鏡餅(一部地域だと一般的に売られているものよりも超豪勢)とかで豊穣という結果を表し、同時にそれをそなえて祝う予祝よしゅくの一種なのである!


というかツバメってやっぱりどこでも春とか夏と紐づいて(cf.古代ギリシャ「一羽のツバメは春を作らずμια χελιδων εαρ ου ποιει」、ドイツ・イギリス「一羽のツバメは夏を作らず」)、縁起がいいんだね!


ちなみに本来は伴奏はなく、すべてコーラスなので、より神秘的じゃないかなと思う。

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マイナーめなクラシックピアノ曲について書いてく 板久咲絢芽 @itksk_ayame

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