雑草

 もしも生まれ変わったら、俺はこの道に生えているような雑草になりたい。雑草になれば、きっと何も考えなくて済むだろう。会社で上司に怒鳴られて、後輩には舐められきってタメ口。彼女には振られるし、もう人生ドン底な俺。俺って生きてる意味あるのかな。



なんて考えていたら、赤信号の歩道を渡っていた。



ガンッ



痛みはなかった。そして、何かが変だった。俺が俺を見つめてる。もしかして、これが死んだってやつなのか。もう死んでる俺を救急隊員の人が必死に助けようとしてくれているのを見ていた。不思議と冷静だった。生きてる意味ないなんて考えていたからだろうか。


 しばらくすると、体が透けてきた。これから天に召されるのだろう。気付くと俺は神様の前にいた。


「お前にチャンスをやろう」

「何のですか?」

「生まれ変わるチャンスだ」

「生まれ変わるチャンス?」

「そうだ。生まれ変わるなら、何になりたい

?」

「雑草」


俺はなんの迷いもなく答えていた。そして俺は雑草として生まれ変わることになった。何も考えずに済むんだ。これで俺は楽になれる。


 俺は道端の雑草になっていた。すると、ガキどもがやって来て俺を踏んで行った。




いてぇ。




あれ?俺今痛いって思ったのか?雑草なのに。それからそれは何度も続いて、俺は後悔した。雑草だから人様みたいに自殺もできないし、ただひたすら苦痛を味わうだけの雑草。




どうやら俺は選択を間違えたようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いくつものはじめまして 有馬れい @arima_rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ