第3話 [♣8]参加表明

「……」


「おやおや~?みんな黙り始めちゃったねー? 言っておくけどルールに書いてあることは本当だよ。だからみんなはルール通りゲームをクリアしなきゃいけないんだよ。じゃなきゃ死ぬよ?」


 死。

 ルールには誰かが条件を達成してから30日以内に条件を達成しなければ死ぬと書かれていた。バラエティでも流石に負けたら死ねなんて、冗談でも倫理的に出来ない。こんな馬鹿けたゲームを開く奴らは一体何者なんだ。クリア出来なかったらどうなるんだ。どういう手段で殺されるのだと不安に駆られ、こんなふざけたことをする奴らに文句を言う口すら開かなかった。


「信じるか信じないかは自由だから、とりあえず5日間は頑張ってこの異世界で生き抜いてみてよ。それ用にルールに書いてある支給品がみんなが寝ていた袋の中にあるから確認してね。それじゃあぐっとらっく~」


 言うことだけ言って、画面から消え去ったジョーカーという名のピエロ。消えた後の画面にはこの端末用のホーム画面が映り出ていた。


 異世界、サバイバルゲーム、賞金100億、負けたら死ぬ。

 先ほどのことの中から気になる単語を抽出すると賞金100億、ゲームという単語に何故だか見覚えがあった。それは何でかと根気よく記憶の奥底から引っ張り出してみると心当たりが一つあった。

 それは俺が妹の見舞い帰りのことだった……。



・・・



 俺の家族は俺と妹の二人しかいない。

両親は不慮の事故で亡くなり、妹は生まれつき身体が悪く持病を患わっており、しかも難病にも指定されているため、大きな病院で入院をしている。費用は親戚に何とか払って貰ってるが、この病を完全に治すためには多額なお金が必要だった。流石に親戚でもこんなお金は用意できなく、俺がいくら仕事を頑張っても到底辿り着けない額に、ただただ絶望し、妹には謝ることしか出来なかった。


「良いんだよお兄ちゃん、わたしの事なんて気にしないでわたしのぶんも幸せに生きてほしいな」


 そんな優しい妹の言葉に涙を流してしまい。俺は何とかして大金を手に入れなければと奮起した。そしてある時、いつもの妹の見舞い帰り、俺の携帯に奇妙なメールが届いていた。


100


 最初は迷惑メールかと思い、いつものように開かず無視するつもりだったが、題名にある100億という文字に、状況が状況だけに惹かれ、興味本位で開いてしまった。メールの本文にはこう書かれていた。


有田謙一様

難病を抱えた妹様の治療費についてお悩みでしょうか?

両親を亡くし、妹と二人だけになってしまい、更には難病の治療に多額のお金が必要になったと理解しております。

そんな学生である有田様にはとっておきな提案がございます。私どもで開催されますゲームに勝ち残これば100億という大金を手に入るチャンスがございます。

もし私どものゲームに興味があるのでしたら、このメールに空メールでも宜しいので返信下さい。

では、有田様の返事をお待ちしております。


 一見、よくある迷惑メールみたいな内容だが、奇妙なのは思いっきり自分宛てに書かれている事だった。何故、自分の名前、置かれている状況が詳しく書いてあり薄気味悪かった。だけど普通ならこんなメール無視するはずだったが、何が何でもお金を手に入れたいと奮起になっているこの状況で俺はつい出来心で本文に書いてあるように返信をしてしまった。後になって考えると迷惑メールに引っかかる奴ってこんな気持ちなんだなと反省した。だけど特に返事をなく、迷惑メールや電話がどっさり来るわけでもなくいつもの通りの生活を送っていた。




・・・




……がしかし、それが今。


「まさか、あれがただのイタズラじゃなかったとは……」


 いつもどうり、学校帰りにバイトして寝て起きたら、見知らぬところに寝袋に包まれながら放り出されていた。あのときのメールが原因でこうなるとは思いも知れなかった。だけど訳も分からない状況で、今さら自分がやった事に後悔する気力は無かった。だが俺はこの状況をポジティブに捉えた。


「いや、俺があの時のメールに返信したことは間違いじゃねーな。そうだよ、やっとこの時が来たんだよ! 念願の大金を手に入るチャンスじゃねーか。100億なんて大金がありゃ渚を救える! いいだろうサバイバルゲームやらなんやらかかってこい! 絶対にクリアしてやる!」


 自分の妹を救うため、立ち上がる青年が一人、ゲームへ意気揚々と参加し始める。しかしこのゲームが待ち受ける本当の恐ろしさに青年はまだ気づかぬのであった。

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デスゲームの舞台に異世界が選ばれました フィッシュン @Fishn

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