第2話 [♣8]目覚め
深い眠りの底で微かに無個性な電子的な機械音が聞こえ始める。
この音は眠りの底から現実へと呼び戻される合図の音である。
そうして徐々に意識を覚醒し始めようとしていた。すると少しずつ肌寒さを感じ始める。冬に移行し始めた季節、人間たちにはこの起き始めて感じるこの寒さは天敵である。その寒さから身を守ってくれている布団の温もりを求めようとしたとき、いつもとは違う感覚に気付く。身体がなぜか動かないのだ。いや、金縛りのように動かないのではなく何かにくるまっているかのように手を大きく広げられないのだ。この違和感で意識の覚醒を早め、すぐさま目を開けると、普段なら目が覚め始めてみる光景ではないものが広がっていた。
「……外?」
綺麗な雲一つのない青空であった。
まだ夢の中なのかと再び目を閉じるが、先ほどから鳴り響く機械音が煩く再び現実へと引き戻される。
とりあえず音の発生源を止めるべく、もぞもぞと体を動かし、自分が眠っていた寝袋から脱出する。そして音の発生源である携帯らしきものへと手を伸ばす。
「これ俺のケータイじゃないな」
世に出回っているようなタブレット型端末の見た目だが、どこのメーカーの物か分かるような刻印やらが何もなく簡素な見た目ものであった。そして液晶画面にはよくあるベルのついた時計の絵が表示されていた。先ほど端末のボタンを押した為、鳴り響いていたアラームが止んだが、画面にはずっと時計の絵が鳴り響いているようなイメージで動いているだけであった。
よくも分からない状況にただただ端末の画面を見ながら考えていると、時計のイラストが消え、何かの壇上らしき所にスポットライトが照らされている背景が写り出る。するとトコトコと歩くピエロらしきキャラクターが出てきてライトが照らし出す中心へと立った。
「やぁ、おはよう! でもこの時間だとおはようって言うには遅すぎるよね。うふふ」
端末の画面には紫と黒を基調としたイメージのピエロが写り、機械的なものに変換されている声が陽気に端末から聞こえてくる。
「まぁみんな色々と混乱しているみたいだけど、最初の挨拶としてこれは言わなきゃね! ようこそ異世界へ!」
いまだにこの状況を整理しきれていない所によくも分からないことを言ってきた。イセカイ……? 伊勢甲斐? 伊勢市に甲斐という地名があるのかなと、変なボケみたいものを生み出したが、まったく状況が掴めない。
「そう異世界! よく日本のアニメでやっているようなファンタジーみたいなところの事だよ!」
異なる世界って意味の異世界なのか。何言っているのだこいつは、そういう設定なのかはたまた、まだ自分が夢の中にいるのかと思い始める。
「なんか~みんな納得してないみたいだね。でもこの後自分たちが異世界にいるって実感するからこの話は後回しにして、本題からはいろっか! みんなにはこの異世界で命を賭けたサバイバルゲームをやってもらいたいと思います!」
サバイバルゲーム? しかも命を賭けるって、何かのバラエティ番組の出し物なのか? それだと俺みたいな一般人の高校生がいるのはよく分からない。
「詳しく話す前にボクの名前を言っておくね、このゲームの司会を務めますジョーカーです! トランプのJOKERが由来なんだよね。さてなんでトランプの話が出てきたのかというとこのゲームの参加者はトランプの数と同じ52名が参加しているんだよ!そしてみんなにはトランプに模したナンバーが振り分けられているから確認してね」
すると画面にはトランプのクラブの8が表示された。そして一緒に文章も出ていた。
勝利条件:[機能]情報交換で得たプレイヤーナンバーの数の合計が51を超える。
異能力:対象の物体の変質を変化させる。(変化量に応じてバッテリー消費)
「今、プレイヤーナンバーと一緒に色々と文章が出てきたけど、順々に説明するね。まずみんなにはこの勝利条件を達成するために動いてほしいんだ。達成すればこのゲームに勝利で来て、賞金として100億を勝利できたみんなで山分け出来るんだ!」
100億だと! そんな大金があれば妹の難病が治せるじゃないか。
「勝利条件は人それぞれ違うし、難易度が難しい人がいるのだけど、その帳尻を合わせるようにみんなには便利なものが付与されているんだ。それが勝利条件の下の文に書いてあるものなんだ。詳しいことはごめんだけど言えないのだけど後々自分たちで確認してね!」
自分が付与されているのは異能力という物質を変化させるという意味の分からないものだ。これのどこが便利なものなのか見当がつかない。しかしこの状況どこまでが本当のことだ? 本当にバラエティの催しなら中々の設定の出来具合だけど、いまいち理解が追い付かない。
「たぶんみんな整理しきれていないと思うけど、先ほどボクが言ったことルールとしてまとめてあるから、みんな読んでね!」
画面いっぱいに文字が表示され、言われるがままに読み始める。そしてところどころ出てくる単語に驚愕し、このゲームの本質の恐ろしさを感じ始めるのであった。
[ルール1]
このゲームは参加者総数52名による異世界サバイバルゲームである。
ゲーム期間内に条件を達した者は勝利者とし、終了時に勝利者かつ生存していたら、現実世界へ帰還出来る。また帰還後は賞金10億を勝利者と山分けとする。
参加者はそれぞれトランプのカードの数字に模したプレイヤーナンバーが与えられ、それに伴った勝利条件が存在する。また他にゲームを有利に進行させるものとして能力がそれぞれに付与されている。
[ルール2]
ゲーム終了期間は、最初の勝利者が現れてから30日後までと設定されるが、その限りではない。ゲーム終了時に勝利条件を達成できなかった者はその場で死亡となる。
[ルール3]
参加者の勝利条件は例外を除いて最初に提示されているものに限る。条件達成時に自分の端末を所持かつ使用できる状況でないと条件達成とならない。勝利条件によって達成不可能の状況となるとその場で死亡となる。
[ルール4]
参加者に付与された能力は最初に配布してあるタブレット型携帯端末を媒体に使用できる。よって他の参加者の端末を媒体にした能力の使用はできない。
[ルール5]
参加者には、このタブレット型携帯端末、サバイバル道具(寝袋型ナップサック・1日分の飲食物)・この世界で使える硬貨、金貨1枚を配布してある。他にこの世界にチェックポイントをいくつか設けており、そこでは端末を充電することが出来たり、当方で用意した宝箱を開けることが出来る。宝箱の中身はこの世界で手に入れることが出来ないものを多く用意している。
[ルール6]
勝利条件に反した行動しない限りは何をしても自由とする。ただしゲームの進行上、当方で進行上参加者に関与する場合もある。
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