袁豹1  雅俗の善きひと 

袁湛えんたんの弟、袁豹えんひょう。字は士蔚しうつ

かれもまた謝安しゃあんによく知られていた。

勉強を好み博識、更に読書を常とした。


著作佐郎となったあと、桓謙かんけんの書記に。


404年、放浪していた司馬遵しばじゅん

劉裕りゅうゆうによって旗頭として立てられると、

司馬遵の書記に任ぜられた。


同年、丹陽尹たんよういんとなった孟昶もうちょうから招聘、

孟昶の副官に任じられた。

その年の末ごろには司徒左西屬に、

更に劉毅りゅうきの相談役に転任。


袁豹と言えばその発する言葉が常に美しく、

古の名文家とすら比較されていた。

更にその詩吟と来たら、

聞くものの誰もが

疲れを忘れるほどであったという。




湛弟豹字士蔚,亦為謝安所知,好學博聞,多覽典籍。初為著作佐郎,衞軍桓謙記室參軍。大將軍武陵王遵承制,復為記室參軍。其年,丹陽尹孟昶以為建威司馬。歲餘,轉司徒左西屬,遷劉毅撫軍諮議參軍,領記室。豹善言雅俗,每商較古今,兼以誦詠,聽者忘疲。


湛が弟の豹、字は士蔚も亦た謝安に知らる所と為る。好學博聞にして典籍を多く覽ず。初に著作佐郎、衞軍の桓謙の記室參軍と為る。大將軍武陵王の遵の承制せるに、復た記室參軍と為る。其の年、丹陽尹の孟昶は以て建威司馬と為す。歲餘にして、司徒左西屬に轉じ、劉毅の撫軍諮議參軍に遷り、記室を領す。豹は言の雅俗を善くし、每に古今と商較され、兼ねて誦詠を以て、聽く者は疲れを忘る。


(宋書52-17_為人)




この人がどういう人かと言うと、読書家の代名詞みたいな感じです。世説新語でも、当代のトップ文人の一人であった傅亮ふりょう殷仲文いんちゅうぶんの文才を評する時に「かれが袁豹の半分でも本を読んでいたらなぁ……」とつぶやいたほど。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054891652192


すごい人だったんだろうけど、世代的に残念ながら武辺者ばっかりがフォーカスされる時代だったので、どうしても名が隠されがちになってしまうのでした。無念。

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