第17話 美少女とゲイのおっさん
僕は受け取った紙袋を開けてみる。
袋には女子用の制服とお花の髪飾り、ふんわりと柔らかい子供用の下着上下セットが入っていた。
「これは…………?」
「いいから、そこの『教員用男性更衣室』で着替えな」
「あ、ありがとうございます!」
月城先生にお礼を言ってから、僕は更衣室に飛び込む。
変装のためとはいえ、下着まで着替える気にはなれなかったのでズボンだけスカートに履き替え、髪飾りをつけた。
近くの鏡を覗いてみると、向こう側には可愛くて愛くるしい『男の娘』がいた。
『僕ってこんなに可愛いんだ…………』と思ってしまった自分が恥ずかしくて、頬が赤く染まる。
「「「「「可愛い…………」」」」」
僕と氷雨と月城先生、優衣と変態教師の声がハモった。
「なんで全員がここにいるんだ!?」
みんなの目が怖くて腰が抜けてしまい、尻餅をつく。その拍子にスカートがめくれ上がり、パンツが剥き出しになってしまった!
両手で中身を隠す僕。慌てて目を逸らす大雨に、冷めた白い目で見つめる他三名。
「ありぇ?」
「下着も、紙袋に入っていたよな? 何故着替えない?」
うわ〜ん! 月城先生も『HENTAI』だあ!
「いや、だってその…………」
「どうやら、思っていることは一緒らしいな」
「そうね」
「だな!」
えっと…………その…………
氷雨が真っ赤な顔してどっかに言っちゃったよ。僕、これからどうなるのかな?
「いやあああぁぁぁ!!」
無理矢理着替えさせられる僕。
(オトナの事情により詳しい描写はカットされました)
「ぐすん。お婿にいけない……」
「涙目の女装美少年…………すごい破壊力だな」
冷静(?)にコメントする月城先生。
「玲! 大丈夫よ。お婿にいけなくても、もうすでに可愛いお嫁さんがいるじゃない!」
優衣、僕はお前をフィアンセと認めた覚えはないぞ!
「次はこれを着てみないか?」
と、変態教師が取り出したのは、…………
ビキニ水着。
鮮やかな赤色のソレは、よくみなくても女性用で、ほぼ紐というか、ほとんど体を覆えそうにない。
例えるなら、悪の女魔道士の赤い版。
「着るかボケぇ!」
僕が教師のキモいにやけ面に放ったハイキックは、脚の長さと股関節の柔軟性不足で、二の腕にヒットした。
が、彼はよろめきもしない。
「……見えた」
あ、このHENTAI、スカートを覗いてる!?
「見ないで!」
近くにあった箱入りの辞書を、目をつぶったまま思いっきり先生に叩きつける。
心底苦しそうな呻き声。手には変な手応え。
当たりどころが悪かったかな?
恐る恐る目を開けると、股間を押さえてのたうちまわる教師の姿が…………
うわあ。痛そ……
まぁ、自業自得……だよね?
「さすがは私のフィアンセね! なんのためらいもなく急所を攻撃できるなんて……」
「コイツも確かに悪いが、今のはひどいと思うぞ」
「ごめんなさい」
「あ〜、うん。大丈夫。コイツは私が黙らせとくから、もう行っていいぞ」
「黙らせるって、どうやって……」
月城先生はいきなり笑顔になって「聞きたい?」と聞いてきた。
怖いよぅ。
「聞きたくないです。」
「なら、さっさと行け。次の授業が始まるぞ」
「分かりました」
「じゃ、行こっか」
「お前は部外者だろ!」
「あ、ここの制服着てたら、今日は学校にいてもいいぞ」
予想外のことを言い出す先生。
「どうしてあなたが、そんなことをすぐに許可できるのですか?」と聞きたいが、聞いたら、後悔しそうなのでやめておいた。
この人は一体何者なんだ?
「やったぁ!」
ウサギみたいにぴょんぴょんはねる結衣。
その横で月城先生が「気をつかってやったぜ!」とでも言いたげなドヤ顔をしている。
うわぁ。
ムカつく!
結衣を着替えさせて、教室に向かった。
廊下で、生徒どもにめっちゃ見つめられた。
優衣はちっちゃくて幼いし、見た目は可愛いから、不思議がられているんだろうな。
教室の前には神代がいた。
「お前、なんなんだその格好は!?」
「優衣? 一応ちゃんと先生が許可してるから大丈夫……」
「あ、こいつもそうだが、それよりお前の格好の方がヤバイぞ」
優衣と怖い教師から逃げ回ってたから、制服のどこかが破けたのかな?
「なぜ女子の制服を……?」
着替えるの忘れてた!?
もしかして、周りの人が見てたの、僕だったのかな?
ちっちゃい優衣を見てるのかと思っていたけど、女子の制服を着ている謎の男子を見ていたのか。
「着替えてくる!」
「お、おい!? 授業始まるぞ!」
僕は友人の制止も聞かずに走り出した。
この時間は使われていない更衣室に飛び込み、そして気がついた。
あ、僕の制服結衣が着てる。
僕の家に美少女が住み着いてしまった件 フカミリン @1575261
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