第60話 ハロウィーンコンサートが終わって
シホ「メグ、お疲れさま!ちゃんと見てたよ~。歌もダンスもめっちゃ上手になったね」
メグ「あっ、う、うわーん・・・・シホさん、ありがとう。それと、お帰りなさい。うっ、うぇあぁーん」
シホ「そんなに泣かなくていいのよ。ほら、ミドリも来てくれたんだから。ペンライト振りながらずっと応援してたんだよ」
ミドリ「よく頑張ったね。振り付けもちゃんと合ってたし、かわいいっていうか、かっこ良かったよ」
メグ「ひぐっ、ミドリちゃん、本当にありがとうね。でも、わたしが泣いてるのはね、亜弓さんがさっき教えてくれた、祐二さんが、祐二さんがね、本当はね、うわあぁーん」
亜弓「ごめん、メグちゃん。最後まで言わないでおこうか、とっても迷ったんだけど、どうせいつか分かるなら、わたしの口からちゃんと伝えた方がいいかなって」
メグ「ぐしゅ、ううん。それは本当に、亜弓さんから直接言ってもらって良かった。一番辛くて悲しいのは、亜弓さんだもんね。ごめんなさい、わたしなんかが、亜弓さんの前で泣くのは、祐二さんにも失礼ですよね」
シホ「謝るのはわたしの方よ、メグ。そして亜弓さん、一度ちゃんとご挨拶しなきゃって思ってたんですけど、なんだかずるずるきちゃって、済みませんでした」
亜弓「そんな、シホさんが頭を下げることなんか、ありませんよ」
ミドリ「わたしこそ、ごめんなさい。祐二くんのことは、誰かに話すようなことじゃないと思ってたから。メグから祐二くんの名前を聞いたとき、ただびっくりしちゃって、なんて言ったらいいか分からなくって・・・」
メグ「あれ?向こうの方から、何か聞こえませんか」
シホ「なにって、別に?」
ミドリ「まさか、あの排気音・・・」
亜弓「うそ、そんなこと、あり得ない。閃太郎くん、どう?」
閃太郎「いや、似てるっちゃ、似てるけど、それだけじゃ何とも言えないな。おれ、夜目は利かないんで、よく見えないけど、シルエットは確かにカタナっぽいな」
メグ「じゃ、運転してる人は見えますか?」
閃太郎「背格好は・・・あ、曲がって行っちまった。いや、さすがにそんなことはあり得ないでしょ。いくらハロウィーンの夜でも、もしそれ、あったらホラーでしょ」
亜弓「でも、あの人、気になることを言ってたことがあったの。もう一人のおれが、おれを乗っ取ろうとしてる。これを言ったら精神科に行けって言われるのは分かってるけど、今すぐあいつを封じないといけない。だからもし、亜弓から見て、おれがおれじゃないって感じたら、その時は既に手遅れだから、すぐに強制入院させてくれって」
ミドリ「そう、そんなに病んでたんだ・・・」
シホ「でも、台湾で祐二さんと出会った人に聞いたら、全然変な様子はなかったみたいよ。亜弓さんが会えなくなった後の話だと思うけど」
亜弓「そう、九九%は普通なのよ。穏やかで、優しいし。いつも冷静で、物知りで、頭の回転が早くて、それでいて人の情を大切にしてて・・・」
メグ「ごちそうさまです。でも、祐二さんの残りの一%のおかしさって、何なんですか?」
閃太郎「うーん、あいつ、人の心の底まで見通すくせに、自分のことはあんまり出さないんだよな。感情の起伏を抑えている分、ストレスは高いと思うけど、それもオートバイで発散してると思ってた」
亜弓「あれ?あそこに歩いているのって、まさか・・・」
閃太郎「え?うそだろ。今度はちゃんと見えた。間違いない。追うぞ!」
亜弓・シホ・ミドリ・メグ「はい!」
亜弓(あれは誰?クローンなんてことはあり得ない。ドッペルゲンガーって、本人が見るものじゃないの。でももし、そうだったら、人格は一緒なんだろうか、それとも・・・)
祐二「あれ?ここはどこなんだ。ん?何か見覚えのある顔がこっちに走ってくる。すごい勢いだ。こわいな。こういう時、どうしたらいいんだろう。取り敢えず逃げるか。ここじゃない、どこかへ」
(了)
メビウス・ロード 武智亜弓 @takechiayumi
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