遠恋
わたあめ
遠恋
真っ暗な部屋に翔の嗚咽だけが響いています。遠距離の恋人の華と二度と仲直り出来なくなってしまったのです。
喧嘩のきっかけは華の部活の都合で、翔のいる地元に帰れなくなったことです。
『俺よりも部活が好きなんだろ。好きにすれば?』
『なんでそんなこと言うの! 翔のことなんか大っ嫌い!』
翌朝、部活に向かう華は喧嘩のせいでぼーっとしていて、車に轢かれて死んでしまったのです。
それから翔は一週間泣き続けました。少し落ち着いたのでしょうか。翔は大学に行きました。翔が講義室に入ると、水希ちゃんが翔に話しかけました。水希ちゃんは高校のときからの翔と華の親友です。
「久しぶりだね。やつれてるよ? ちゃんと食べてる?」
翔は返事をしません。返事はした方がいいと思います。
「そうだ! 今日、ご飯つくりに行ってあげようか!」
「来ないで」
水希ちゃんも華が死んで、とても辛いはずですが、いつも通り話しかけています。しかし、会話にはならず、講義が終わりました。翔はなんて冷たいんでしょう。
「また明日ね」
水希ちゃんはそう言って、翔と別れました。
翔は大学に行くうちに、水希ちゃんと一緒にいる日が増えました。一緒にご飯を食べたり、買い物をしたりしました。こうして、翔はポジティブになっていきました。そんなある日……。
「ずっと翔を支えていきたい。だから、私と付き合おう」
水希ちゃんの告白です。翔がなんて答えるのか気になります。
「水希はいつも俺のことを想ってくれたけど、華を忘れられないんだ。ごめん。」
翔は一人で幸せになることへの罪の意識を感じている様子です。これからずっと華のことだけを想っていくのかな。
日曜日、翔は華の家に向かいます。華のママに、華の日記を読んでほしいと言われたようです。翔は日記を読むと、涙を流しました。華との思い出がいっぱいです。そして、最期のページを読みました。
『明日になったら謝ろうと思います』
華にはその時間はありませんでした。
『翔には幸せになってほしいです。もし別れても、翔が幸せなら華も幸せです』
日の光が入り込み始めた部屋には涙をこらえ立ち上がる翔の姿がありました。
翔に日記を見られちゃったことは恥ずかしいですが、翔が新しい希望に向かう手助けができたならよしとします。ちょっと寂しいですけどね。華はまだ翔が好きです。ずっと見守っていきます。あの世とこの世の遠恋です。
遠恋 わたあめ @candyfloss
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます