2008年5月24日 その3

……と。

そこまで書いてキレイに終わらせようと

したところでメールが来た。

彼かと思ってウキウキ開いたら、

差出人は蒲田戸マリだった。

いや、正直もうそれほどウキウキとは

してなかったけどね。

あたし、単なる“相方”だもんね。(皮肉)


マリからのメールには、魔法の国の母から

手紙の返事が来て、例の“血の儀式”の意味が

わかったと書かれていた。

なんであたしに送ってくるかねえ、

と思いつつ読み進める。

モヤさま2が終わってヒマそうにしていた

白いインコも、携帯をのぞき込んできた。


「……むむっ?」


それによると、どうやら“血の儀式”とは、

魔法の国から人間の世界に“使い魔”を

導くための術らしい。

また、その使い魔は、捧げられた血から

生まれる、とも書かれている。


……いやいや。

待てよ待てよ。

ハツノリ先輩が、“血の儀式”を

させられたのっていつだって言ってたっけ?


「拉致された5月18日です」


インコが言う。

とすると、その儀式によって生み出された

使い魔がこっちの世界に来てるってことだ。

あたしは885系を掴み、

目の前に持ってきて向き合う。


「じゃ、あんたを拾った日は?」


「5月18日ですね」


……。

しばらくの沈黙。


とぼけたように首をかしげて

中空を見つめる885系。

まさか、こいつが……?


「ま、そんなこと、

 どーでもいいじゃないですか」


気まずそうに、みつまジャパンの

物真似でごまかしやがった。

ああそうか、それでこいつ、お笑い番組が

やたら好きだったんだな。


「ともあれ、今後ともよろしく

 お願いしますね、ユキさん」


と、深々とおじぎをする白インコ。


……まあ、いいけど。

相変わらずエサは食い散らかすし、

うざい時も多いけど、変身の魔法には、

まだお世話になるだろうしね。

なにより、彼の分身みたいなものなのだ。

それに……。


「……?」


返事がなくて、首をかしげて

こっちを見てる885系。

実はあたし、ひとつ気付いたことがある。


そもそも使い魔は、儀式をした魔女の元に

行くようになっていたはず。

それって、血を捧げた人物が花婿候補で

あることが前提なわけで、つまり、

その血の持ち主が“もっとも好意をもつ人”の

元に行くようになってるのではなかろうか。


だから。

まあ、偶然ここに流れ着いた感じなのが

少し気になるところだけど。

こいつが、あたしの所にいるうちはね。

希望は……あるのかな。

とかね。

なんてね。

思うわけなのだよ。

うひひ。


あたしが返事をせずニヤニヤしていたので

885系は、不審そうな顔で

首をかしげていた。


あたしは気を取り直して、返事を告げる。


「うん、よろしく! ずっとね!」


885系は喜んで飛び上がり、いそいそと

定位置(あたしの頭の上)につく。



……さて。

さっそく明日から漫才の立ち稽古を

するらしいから、それまでにツッコミの

セリフを埋めておかないといけないのだ。

なにげにきついよね。

今日は徹夜になりそうだ。


というわけで。

これから、なにかと忙しくなりそうな

南浦和ユキでした。

だから日記は、これでおしまい。



またねっ!



(おわり)

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