異世界へは異性の持ち込み可能です!!

ハッタリ

プロローグ 告白するのがこんなに大変なのってマジ?

 グラウンド横にある蛇口に部活終わりの高校生が一人。



 蛇口から透明な水がでる。夏場の最初の方の水は暖まっているから、手で触って十分に冷たくなるのを待つ。急に冷たくなる。



 俺は蛇口の水を頭から被る。ヒンヤリして超気持ちいい!



 「ヒャーッ、気持ちー」



 そのまま、蛇口の水をごくごくと飲む。余った水は排水口へ流れる。頭から水滴が垂れる。



 「っぱー、ウメー!!」



 ただの水道水でも今の俺だったら美味しく感じる。それにこの雲一つない快晴がそれをさらに際立たせる。



 最高だ!



 そして俺はさっき被った水を犬のように頭を左右にふって散らす。



ブンブンブンブンブン



 「つめた!」



 隣から聞こえた声は女の子の声だった。どうやらいつの間にか横に来ていたのだろう。散らした水が当たってしまったらしい。



 「あ、スイマセン」



 「いえいえ大丈夫です。私の方こそ不注意で……ってあんたかい!!」



 強烈な張り手と共に見事な突っ込みを入れた彼女は俺の部活のマネージャー。



 その明け透けな性格故(ゆえ)に彼氏がいたことはない、らしい。本人は作らないだけだと言っているが。


 彼女の見た目は黒髪でポニーテール。身長は俺よりやや低いくらいで目はキリッとしている。


 今は部活の練習が丁度終わったところ。俺とこのマネージャーの二人きりだ。他の部員はみんな帰った。



 「まだいたんだ。自称完璧なマネージャーさん」



 「そうそう、ビブスを洗おうと思ってね。あとそれムカつくー」


 顔をしかめて言うマネージャー。


 「あんたは何で残ってんの?」

 

 彼女は蛇口の方を向いてビブスを洗いながら聞いてきた。


 「ちょ、ちょっと忘れ物があってな……」


 「そうなんだ……」

 


 シャカシャカ



 ……



 「そ、それにしても暑いなー」



 僕が言うと。彼女は。



 「今日37℃だってさー」


 「マジかよ……」


 ………



 やべー、気まずい。何か話さなきゃ。



 取り敢えず俺は水道の水を飲む。



 照りつける光と熱、地面がそれらを反射する。そして蝉の声。



 ジリジリ


 ミンミン


 シャカシャカ



 ………



 ちなみに、俺は忘れ物なんてしていない。そう言ったのは本当の理由を言えないからだ。

 俺が、まだ帰らない理由は、



 彼女に告白をしたいからだ。



 2年の間に募らせた想いは、俺に、告白をする後押しをした。もう止められない。


 しかし、いざそのチャンスが目の前に来ると緊張して仕方がない。喉が熱くなって言葉がでない。言いたいことが言えなくてもどかしい。


 あぁ、どうせなら彼女の方から告白をしてくれないだろうか。

 一度くらいは女子から告白をされてみたいものだ。


 いや、そんなことでは男が廃る。やっぱり男から告白しなければ!

 

 言うぞ!俺は言うぞ!


 「……す……」


 「……?」


 「す、す…………」


 マジかよ、こんなことも言うないのか俺はっ!


 いや、絶対に言う!決めたんだっ!


 「す「きぃぃぃいいいいいん!!」


 好きですっ!付き合ってくださいっ!!こんな簡単な日本語でさえも俺は彼女に伝えられなかった。


 何かが加速したときのような音と共に視界が真っ白になって、俺は気を失った。


 




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