そのクエスト、ちゃんとお父さんに許可もらってる?

ちびまるフォイ

最強の仲間を連れて行く方法

「娘さんを……パーティに入れさせてください!」





「 ならん!!! 」




「冒険者の一行にくわえさせて……」

「くどい!!」


ぴしゃりと断られてしまった。


「あの……」

「なんだ」


「このくだりって本当にいるんですかね。

 一応、娘さんも冒険者なわけですし

 それをいちいち親御さんに許可をいただくというのも……」


「貴様! 大事な一人娘が危険な旅に出るかもしれないというのに

 親がいちいち口を出すなと言っているのか!!」


「いやだって普通こういうのって本人の意思の問題でしょう!?」


「貴様は手塩にかけて育てたかわいい娘が

 悲しい亡骸で帰ってくるかもしれないというのに

 黙って見守っていれというのか! 切れ! ここで腹を切れェ!!」


「わかった! わかったから刀を置いてください!!」


ひといきつくと勇者はそっと切り出した。



「……あの、どうすれば娘さんをパーティにくわえさせてもらえるんですか?」


「内容による」

「内容?」


「ドラゴン討伐とか危険なものには同行させられん」


「危険な任務だからこそ、人手がいるんじゃないですか」


「貴様! 娘はそこいらの鉄砲玉冒険者と一緒にするな!!

 娘はな、小さい頃はいつもお父さんお父さんと言ってくっついてきて

 大きくなったらお父さんのお嫁さんになると言ってくれて……」


「わああ! わかりました、わかりましたから!

 必要以上に危険なものには連れて行かなければいいんですね」



「それだけじゃない」


「え?」



「貴様、パーティの男女比はどうなっている?」


「娘さんを含めると、男4の女1ですね」


「貴様ァ!!! ここで死ねィ!!」


「なんで!? なんで!?」


「そんなむさい空間に紅一点の娘が加わるとどうなる!?

 絶対にいやらしい目で娘を見るだろう!? そうだろう!?」


「命の危険を伴う任務でいちいち鼻の下伸ばしてられませんよ!」


「馬鹿野郎! 命の危険を伴うからこそ、そういう目で見るだろう!」

「偏見がすごいな!」




「……とにかく、女人が1人だけの状況はけして許さん。

 女子の間でしかできない相談もあるだろうからな」


「わかりましたよ……。女の仲間をもうひとり入れればいいんですね」

「うむ」


「ああよかった。これでやっと冒険に出られるぞ」


「待て。娘の職業はなにになっている?」


「え? 娘さんから聞いてないんですか?」


「洗い物一緒にしてからというもの口を聞いてくれないのだ」


「そんな関係性で冒険者の仕事に口を出し始めたら

 ますます嫌われる一方のような……」


「父親はときに娘に嫌われてでてもなすべきことがあるんだ!」

「少なくともこれじゃねぇ!」


「で、娘の職業はなんなんだ。回復魔道士か?」




「戦士です」



「せっ……ふざけるなぁ!!」


「ちょっ……なんで俺なんですか!?」


「女戦士なんて守ってるんだか守ってないんだかわからない

 きわどい防具で裸体を晒すだけの存在じゃないか!

 それをパーティに入れたがるなどやはり貴様そっち目的だな!!」


「ちがいますって!」


「嘘をつけ! 少なくともワシならそっち目的で入れる!」


「それはあんただからだろ!」


「とにかく、娘を連れて行くのは許さん。

 娘が心身ともに傷ついて実家に戻ってくるようなことだけは

 どんなことをしてでもこの父親が阻止せねばならんのだ」


「ええ~~……」



翌日、冒険者ギルドには勇者がこっそりやってきた。


「昨日は絶対に阻止するとまで言われたけど、

 黙って連れていけばわからないだろう」


受付に向かい仲間を迎え入れる手続きを済ませる。


「承りました、戦士をひとり、ですね」


「はい」


「戦士ちゃん。ご指名で~~す」


受付が呼ぶと、ギルドの奥からビキニアーマーを

カチャカチャ鳴らしながら戦士がやってきた。




「言ったはずだ。娘は絶対に連れて行かせん」




きわどい防具のお父さんはめっちゃ強かっという。

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