第08話 ゆで卵

 宣孝君にメニュー見られないようにこっちに移動してっと。


 「はい!誕生日おめでと!」


 緑色の屋根。内装は赤と茶色で壁にはラーメンのどんぶりのマークがあちこちにプリントされている。中華料理店ニーイーディンシン。


 「ありがと!」


 式部と宣孝は8人座れる円卓に二人並んで座り、式部から渡された紙袋を宣孝はガサガサっと開ける。


 「え、えーと。ほ、補強テープ?」


 「そう!銀色でキレイでしょ!これ見たとき!これだ!って思ったの!」


 「う、うん・・・ありがと・・・。」


 「あれ?嬉しくない?」


 「そ、そんなことないよ!すごくうれしいなぁ!」


 「喜んでもらえたなら良かったわ!じゃー料理ね!私の計画を話すわね!」


 ――――――――――

 ゆで卵入り麻婆豆腐定食880円

 ――――――――――

 (内訳)

  麻婆豆腐240円

  ごはん60円

  ザーサイ30円

  杏仁豆腐50円

  卵スープ30円

  調理料100円

  合計

   510円

 ――――――――――


 「この値段で、おかわりはごはん?高くない?」


 「違うわ!ゆで卵入り麻婆豆腐よ!ゆで卵入りなのよ!」


 「ゆで卵入り麻婆豆腐・・・聞いたことないから楽しみだ。880円-510円=370円 麻婆豆腐を2回お代わりすればいいかな?」


 「ここはちょっと違うの。話しちゃうと面白くないからヒミツね!で、目標はゆで卵5個よ!」


 「うん。わかった。注文が届くのを楽しみにしてるね!」


 「ええ!」


 「店員さん呼ぶね。丁度来た。てんいんさーん!」


 「はい。ご注文でしょうか?」


 「はい。ゆで卵入り麻婆豆腐定食を2つお願いします」


 「注文は以上でよろしいでしょうか?」


 「はい」


 「注文うけたまわりました。では、しつれいします」


 「中華料理って、ぼくはチンジャオロースが好きなんだよなー」


 「チンジャオロース美味しいよね。わたしはゴマ団子!」


 「あー。甘くて美味しいよね。もちもちだしゴマの食感もいいし」


 そういえば、疑問があったわ。


 「ステーキって中華料理にないわよね?」


 「・・・。えーと、ステーキって洋食だしね」


 「でも、ステーキって、焼いただけよ?それがないのよ?不思議じゃない?」


 「うーん。多分だけど、ナイフという文化がなかったからじゃないかな?だから、肉は一口サイズになってるんじゃない?レバニラとか酢豚とか」


 そ!そうかも?!さすが参謀よ!


 「わかった。納得よ!」


 「間違ってるかもしれないよ。ぼくがそうじゃないかなーって思っただけだから」


 「そんなことはどうでもいいのよ。わたしが納得したんだから」


 「ゆで卵入り麻婆豆腐定食をお持ちしました」


 「ぉー」


 麻婆豆腐の中にゆで卵がまるまる3つ浮かんでいる。


 「ビックリしたでしょ?!さぁ!食べましょ!」


 「「いただきます」」


 まずは、麻婆豆腐の中にあるゆで卵から・・・。


 箸ではさもうとするが、つるん、つるんとにげて、ちゃぷん、ちゃぷんと麻婆豆腐を跳ね上げそうだ。


 「待って。式部さん」


 ちょ、ちょっと、今、ゆで卵を捕まえるのに忙しいの!


 「な、なに?」


 「箸だけだとつかみづらいから、レンゲを使った方がいいよ」


 ん?レンゲ?レンゲ!


 「ありがと!そうするわ!」


 レンゲで抑えながら箸ではさむと、すんなり捕まえゆで卵を二つに割ることができ、麻婆豆腐をからめて口に運ぶ。


 ピリリィ


 「イタ美味しい!」


 「うん。ちゃんとした胡椒の麻婆豆腐で本場の味だね!」


 ゆで卵、大好きなのよね。


 もきゅ。もきゅ。


 「とりあえず、おかわりしてみるね」


 「え。え?!もう、食べたの!!」


 「うん。ゆで卵だけだけどね。てんいんさーん」


 「はーい」


 「ゆで卵入り麻婆豆腐のおかわりお願いします」


 「はい。ゆで卵いくつにしますか?」


 「いくつ?えーと、3個でお願いします」


 「あ。まだ、食べ終わってないけど、わたしもおかわりできますか?」


 「はい。できますよ」


 「それじゃ、1個お願いします」 


 店員さんが寸胴鍋ずんどうなべがのったカートを押してきて、寸胴鍋ずんどうなべの中に入った麻婆豆腐をゆで卵ごとお玉ですくい皿にそそぐ。宣孝は3杯、式部は1杯。


 注文が来たときと同じ状態に戻ったわ!得した気分ね!


 と思っていたのもつかの間・・・。ゆで卵・・・お腹にくるわ・・・


 「ゆで卵ってお腹にくるね。ぼく、もうおかわりできないや」


 「そうね。わたしもできないわ」


 そして、最後の一口を口に含む。


 「た、食べたーーーーー。」


 ◇ ◇ ◇ 宣孝君視点


 式部さんがニコニコとして、後ろ手に包み紙を隠している。


 「はい!誕生日おめでと!」


 緑色の屋根。内装は赤と茶色で壁にはラーメンのどんぶりのマークがあちこちにプリントされている。中華料理店ニーイーディンシン。


 「ありがと!」


 式部と宣孝は8人座れる円卓に二人並んで座り、式部から渡された紙袋を宣孝はガサガサっと開ける。


 なんだろ?!なんだろ?!楽しみだな・・・あ?へ?


 「え、えーと。ほ、補強テープ?」


 「そう!銀色でキレイでしょ!これ見たとき!これだ!って思ったの!」


 「う、うん・・・ありがと・・・。」


 なんで、補強テープ?誕生日プレゼントにありなの?あり?


 「あれ?嬉しくない?」


 「そ、そんなことないよ!すごくうれしいなぁ!」


 何を考えてるんだぼくは、式部さんが心を込めて選んでくれたプレゼントに問題あるわけないじゃないか!大事に使・・・とっておくよ!


 「喜んでもらえたなら良かったわ!じゃー料理ね!私の計画を話すわね!」


 ――――――――――

 ゆで卵入り麻婆豆腐定食880円

 ――――――――――

 (内訳)

  麻婆豆腐240円

  ごはん60円

  ザーサイ30円

  杏仁豆腐50円

  卵スープ30円

  調理料100円

  合計

   510円

 ――――――――――


 「この値段で、おかわりはごはん?高くない?」


 麻婆豆腐定食でも、1000円超える店もあるけど、街の中心街ってわけじゃないしな?


 「違うわ!ゆで卵入り麻婆豆腐よ!ゆで卵入りなのよ!」


 ゆ、ゆで卵入り?そういえば、ゆで卵付きじゃなくて、ゆで卵入り?


 「ゆで卵入り麻婆豆腐・・・聞いたことないから楽しみだ。880円-510円=370円 麻婆豆腐を2回お代わりすればいいかな?」


 「ここはちょっと違うの。話しちゃうと面白くないからヒミツね!で、目標はゆで卵5個よ!」


 よくわからないけど。


 「うん。わかった。注文が届くのを楽しみにしてるね!」


 「ええ!」


 「店員さん呼ぶね。丁度来た。てんいんさーん!」


 「はい。ご注文でしょうか?」


 「はい。ゆで卵入り麻婆豆腐定食を2つお願いします」


 「注文は以上でよろしいでしょうか?」


 「はい」


 「注文うけたまわりました。では、しつれいします」


 「中華料理って、ぼくはチンジャオロースが好きなんだよなー」


 ピーマン好きじゃないのに、チンジャオロースはパクパク食べれちゃうよ。


 「チンジャオロース美味しいよね。わたしはゴマ団子!」


 「あー。甘くて美味しいよね。もちもちだしゴマの食感もいいし」


 なんか話が、定食からおやつにジャンプしたかな?


 「ステーキって中華料理にないわよね?」


 さらにジャンプ!


 「・・・。えーと、ステーキって洋食だしね」


 「でも、ステーキって、焼いただけよ?それがないのよ?不思議じゃない?」


 そう言われれば、そうかな?


 「うーん。多分だけど、ナイフという文化がなかったからじゃないかな?だから、肉は一口サイズになってるんじゃない?レバニラとか酢豚とか」


 「わかった。納得よ!」


 え?!いやいや!


 「間違ってるかもしれないよ。ぼくがそうじゃないかなーって思っただけだから」


 「そんなことはどうでもいいのよ。わたしが納得したんだから」


 あ、この信頼関係って恋人っぽい!!


 「ゆで卵入り麻婆豆腐定食をお持ちしました」


 「ぉー」


 麻婆豆腐の中にゆで卵がまるまる3つ浮かんでいる。


 「ビックリしたでしょ?!さぁ!食べましょ!」


 うん。ビックリした・・・麻婆豆腐にゆで卵が浮かんでいるのはじめて見たよ!


 「「いただきます」」


 どうやって食べようかなと式部を見る。


 つるん、つるん、ちゃぷん、ちゃぷんと麻婆豆腐を跳ね飛ばして洋服を汚しそうな式部さんが目に入り、思わず声が出てしまう。


 「待って。式部さん」


 「な、なに?」


 「箸だけだとつかみづらいから、レンゲを使った方がいいよ」


 「ありがと!そうするわ!」


 輝く笑顔!いただきました!


 ぼくも食べよう。レンゲを使って、ゆで卵を潰して、麻婆豆腐に混ぜてパクリ。


 ピリリィ


 「イタ美味しい!」


 「うん。ちゃんとした胡椒の麻婆豆腐で本場の味だね!」


 パクパク!パクパク!


 あまりに美味しくて、ごはんにも手をつけづに、ゆで卵と麻婆豆腐を平らげてしまう。


 「とりあえず、おかわりしてみるね」


 「え。え?!もう、食べたの!!」


 思わず・・・てへ。


 「うん。ゆで卵だけだけどね。てんいんさーん」


 「はーい」


 「ゆで卵入り麻婆豆腐のおかわりお願いします」


 「はい。ゆで卵いくつにしますか?」


 ん?


 「いくつ?えーと、3個でお願いします」


 「あ。まだ、食べ終わってないけど、わたしもおかわりできますか?」


 「はい。できますよ」


 「それじゃ、1個お願いします」 


 店員さんが寸胴鍋ずんどうなべがのったカートを押してきて、寸胴鍋ずんどうなべの中に入った麻婆豆腐をゆで卵ごとお玉ですくい皿にそそぐ。宣孝は3杯、式部は1杯。


 パクパク!パクパク!


 これは思った以上に食べ応えがある。


 「ゆで卵ってお腹にくるね。ぼく、もうおかわりできないや」


 「そうね。わたしもできないわ」


 ぼくは食べ終わり、しばらくすると式部さんが最後の一口を口に含む。


 「た、食べたーーーーー。」


 式部さんのお腹が落ち着くのをまち席をたつ。


 「それじゃ、行こうか?」


 「ええ」


 ビリリィ!


 その瞬間、食べ過ぎたためだったのか、ぼくのズボンのお尻がパックリと破れる。


 は、恥かしい!


 それを見た式部がすかさず、宣孝に言う。


 「そこよ!テープ!」


 「いや!余計目立つよね?!テープ銀色だよね!!」


 僕たちの夫婦漫才を聞いて、円卓の向かいでゆで卵をまるまる一つ口に入れていたおじさんの口からゆで卵が放たれる。弧を描くように飛んでいく。どこまでも、どこまでも。


 お・わ・り

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式部さんは食べ放題で元とりたい! 酔玉 火種 @yoidama-hidane

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