Epilogue - The Last Day

 ……………




 ………



 最初の日から1年が経った。

 ジリリリリリッ!ジリリリリリッ!

 いつも通り目覚まし時計のアラーム音が鳴り響く。


「んぅ…。」


 いつも通りエイキが起きる。


「ん…ふぁ〜…」


 …いつも通りじゃないのは、スカルも起きようとしている点だろうか。


「…兄さん、おはよう。」


 エイキはそんなスカルに声を掛ける。


「あぁ、おはよう。…今日だよな?」


 スカルも返し、そして確認する。


「うん。…今日が最後。」


 エイキはそれが正しいと伝える。


「あぁ、寂しくなるな…。」


「ごめんね…。でも、僕はあそこに行かなきゃならないんだ。」


の髄までわかってるさ…。」


「ごめんね…。僕のためにを削ってくれたのに、あそこに行く事にして…。」


 そう。

 今日は、エイキが一人立ちする日だ。



 …



「ご飯出来たよー。」


「あぁ、ありがとな。」


 エイキはいつも通りに朝食を作った。

 簡素な和食とも表現出来るそれは、見た目には豪華さは無かった。

 それを頬張り、スカルは言う。


「あぁ、上手くなったな…。」


 感動している、そんな感じだろう。


「ありがとう、兄さん。あの頃は酷かったよね…。」


 エイキは初めて料理を作った時の事を思い出していた。

 いくら酷い出来栄えでも、スカルは残さず食べてくれた。


「あぁ。…これも、もう最後か…。」


「…。」



 …



「さて、じゃあ、約束通りだ。俺の能力の話をしてやろう。」


 朝食を食べ終えたスカルは、自身の能力を話そうとしていた。


「無理には話さなくていいんだよ?」


 エイキはスカルを心配しているようだ。


「いや、あそこまで行くなら俺の能力のの髄まで理解して貰わないといけないんでね。」


 スカルはいつも通りに言おうとしているが、真剣さが感じられる。


「…分かった。」


 その真剣さを感じ取ったエイキは大人しく聞く事にしたようだ。


「まず単刀直入に言うと、俺は異世界の人間…いや、今こそこんな姿だが、元はスケルトンだった。モンスターは能力があって、それが近道Shortcut、つまりはテレポートだった。だから俺は兄弟をそこまで送れる。理解したか?」


「えーと…。うん。多分。」


「heh…。じゃあ、これをやるよ。」


「これは?…Worldline 309 - Forgotten Execute…?」


 それは、他のノートと同じ見た目をしていた。


「…そこに、俺についてが書いてある。」


 スカルは言う。

 表情は少し暗めだ。


「つまり、兄さんは…」


「あぁ、他のWorldlineの『Sans』だった奴だ。最も、今はもうそいつじゃないがな。」


 スカルは『Sans』のようにウィンクをしながら言った。


「…なるほどね。似てるとは思ってたけど…。」


 納得したようにエイキは答える。


「heh。似てるって分かってたらいずれにせよバレてただろ?」


 いつも通りの仕草でスカルが言う。


「それで、そのノートには俺の過去が書いてある。読むも読まないも兄弟の自由だ。」


 真剣な顔になり、スカルは言う。


「…わかった。」


 エイキは頷いた。


「あとは…」


「俺のことを、忘れないでくれ…。」


 スカルは悲しそうな顔をして言った。


「…ふふっ、ここまで世話してもらって忘れるわけないよ。」


 エイキは椅子から立ち、スカルの横まで行くと、スカルの背中をさすった。


「…唯一の家族なんだから、ね?」


 エイキは笑顔でそう言った。


「…そうだな。」


 スカルは少し驚いたような顔をしていたが、すぐにいつもの笑顔に戻し、答えた。



 …



「…さて、忘れ物は無いな?」


「必要な物も少ないけど、多分これなら大丈夫だよ。」


 少し大きめのリュックサックを背負ったエイキといつも通りのスカルが話していた。


「もうここには戻ってこれない。それでもいいんだな?」


 スカルは確認する。

 エイキはそれに深い頷きで返した。


「…じゃあ、行くぜ。」


 そう言うとスカルはエイキの手を取り、玄関へと向かった。


 そして玄関に着き、二人は手を繋いだまま玄関のドアを開け、それをくぐった。


 するとそこには、森が広がっていた。

 特に珍しい植生も無く、気温的にも過ごしやすい森林だ。


「えーと…ここは港の近く?」


「ああ。打ち合わせ通りだ。」


 どうやら2人はここに来るようにしていたらしい。


「ありがとう。…最後までお世話になりっぱなしだったね。」


「ああ。世話してやって、ここまで連れてきたんだ。後は頑張れよ。」


 二人は向かい合い、笑顔で話していた。


「うん。…じゃあ、またいつか会えたら会おうね。…僕の、最高の兄さん。」


「ああ。…また、な。…俺の、最高の兄弟よ。」


 二人の目には涙が浮かんでいた。


 二人はお互いに背を向け、涙を拭った。


 スカルはその場から掻き消え、どこかへ行った。


 エイキは前を見据えた。

 遠くには虹色のキューブが生えている山が見える。

 その山に向かい、彼は呟いた。


「…はじめまして、よろしくお願いします、…ジャパリパーク。」


 そして彼は歩き始めた。




 ………

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正義と元・骨がパークへ辿り着くまで えぬけー @NKDefender

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