何者か分からないけど愛してもらっていいですか

黒豆

第1話

自分ってなんだろ。

ふとそう思った。自分とはなんなんだ。

自分を本当に見ているのはたぶん自分だ。

その自分が自分を分からないのなら一体誰が自分を分かるのだろうか?

友達か?兄弟か?母親か?いいや違う。

そんなの向こうの自己満足だ。勝手に俺を決めつけるな。俺はみんなが思っているほどいい子じゃない。いつも他人を見下して心の均衡を保っているそんな弱い人間だ。そうだそれが俺だ。きっとわかっていたはずだ。けれど、見えないふりをしていた。自分が1番自分の正体を知りたくなかったからだ。自分は世界にとっては本当にちっぽけな存在で、ただの弱い人間だと自覚したくなかった。だから本当の自分を見ないように生きてきた。

俺は自分という概念の形成を他人に委ねていたのだ。他人が思うような自分に成り代わることでこの世界に存在することができた。

しかしこの世界は不安定だ。

小さな歪みが、大きな亀裂になり、

世界は崩壊していく。

数歩のズレは命とりなのだ。

相手が思う自分になることができなければ、俺は俺でなくなる。

自分の弱い心をこの世界は蝕んでいった。

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何者か分からないけど愛してもらっていいですか 黒豆 @96001202

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