第45話 カーちんの逆襲! 新たなる力、その名は「ウルフガイ」


 ハイ、と言う訳で!!


 今回も転生帰りで女神さまのもとへ向かっている状態である。


 しかし今回のオレはテンションが違うぜ! なにせ前回の転生ではパティシエに転生し、チョコレートのテンパリングを極めてきたのさ。


 テンパリングとは何かって!? んなもん知らねぇよ! 帰るわ! って?

 

 おいおい焦るんじゃねぇよブラザー・トム。テンパリングとはすなわちチョコレートを溶かして固めるための工程のことだ。


 手作りチョコとかでもやるだろ? 湯煎で融かして固めて~ってヤツ。つまり要するに、これを極めることで極上のチョコを造りことが出来るのさ!


 チョコのおいしさってのはさ、実はこのテンパリングで決まってしまうものなんだぜ? 知ってた? 知ってた?


 んまぁそう言うわけで、今回のお土産が最上級のチョッッッコレィィートだということが分かってもらえればよいと思う。


 さて当然の疑問として、なぜすでに「釣った魚」状態であるところのガー様の為にそこまでするのかと思われるかと思う。


 何の土産もなくても、のべつまくなしイチャついてるだろうオマエラって?


 もちろん、それはオレがガー様を変わらず愛し続けているから――などと言う訳ではない!


 じゃあなぜかって? 主導権だ!!


 とにかくいろいろあったせいか、最近のオレはいろんな意味であの調子乗った女神に主導権を握られっぱなしなのである。


 もうなんか、どうしようもないぐらいに握られている! もう、◆■◆ピーに首輪でも付けられてんじゃねーの!? ってぐらい!!


 どうしてこうなってしまったんだ……本来はどこか抜けてるあのダ女神をおちょくりつつ、楽しく転生を繰り返すのがオレの日常だったはずなのに!


 その上、このごろは悪魔との公式戦に勝ったとかで、以前にもまして調子コキまくりなのだあの女神は。


 なんかもう、いろいろと手が付けられない感じ。


 人との接触を極端に恐れていた根暗女がちょっっとしたことで表舞台に引っ張り出されてしまい、そこで何かの幸運が重なって自分を全肯定するようになり、一夜にしてキャラが180度変わってしまったかのような有様だよ!


 いや、それでも愛する女神ヒトなのは変わらないんスけど、なんか端々で余裕みたいなのが垣間見えるのがムカつくんスよね♡


 そうじゃないんだよガー様。違うよ。こう……普段は疲れたような感じで、不機嫌そうに眉をひそめてるところをアレコレをおちょくって会話を広げていくのがいいんじゃないですか。


 アンタ変わったよ! 何かっつーっと前向きに考えちゃってさ! オレがなんかやらかしても慈母神のごとく受け入れてくるし! 


 セクハラしてもセクハラを逆手にとってオレを捕食してこようとしやがるし!!


 そうじゃねーんだよ! なんつーかこう、もっと余裕ない感じでオレに振り回されてアワアワしてるぐらいがいいんだよアンタは!!  




 ハイ、というわけでね(2回目)。


 今回はそんな余裕ぶっこきな女神を攻略していきたいと思います。


 そう、ガー様の弱点といえばいお土産だ。


 そのためのチョッコレッイィィーート!! ククク。今回ばかりは涼しい顔をしていられまい。


 当然すぐにでも欲しがるだろうが、簡単にはやらんぞ!


 一粒だけ持ってじらすのだ。欲しかったら口を開けなさい。そら、もっと大きく、あーんして?


 そうそう、クククク。まるで餌をねだるコイのようですなぁ。


 なんだ恥ずかしいのか? 何をいまさら恥ずかしがるんだろうねこの子は?


 おっと、反抗するならチョコは無しだぞ?


 そうそう。おとなしく従うんだ。オラ! 正座だよ正座! 正座すんだよ!


 ……ちげーよ! 星座じゃねーよ! 星座になるな! いやオレも星座にすんな! そういうことじゃねーんだよ!!


 やめろこの神め!! ……ったく、そうじゃねーよ。誰が夜空で輝きてぇっつったんだよ!!


 だから正座して? そうそう。んで、口を開けるのだ。


 そぉーら、お口でお迎えするんだよぉ。手を使うんじゃない!


 そうだよ。ほら、舌を伸ばして。ククク。なぁんて格好だろうね。恥ずかちいねぇ?


 でもそんなガー様が大好きだよ♡


  

 


 なんてなー!!! ぶひゃひゃひゃひゃひゃ!!!


 たまりませんな―! なんかもう、想像するだけでも興奮が止まらんよキミィー!!


 あー、いやもうホント妄想してるだけでたまりませんわぁー。なんかもう、すでに気持ちよくなっちゃったよ。


 ……あれだ、遠足行くのが楽しみすぎて実際の遠足よりも楽しくなっちゃうみたいな?


 人は待つ時間にこそ幸福を感じるってやつか……というか。


 なんかそういうんじゃなく実際に気持ちいいような?


 なんだろう? 興奮しすぎたのか?


 いやなにかおかしいぞ? 何か、何かおかしい。こう――なんていうか、もう実際に性感帯がもてあそばれているかのような?


 オレは妄想をやめても自らをかえりみる。特にメインの性感帯の辺りを。


 例えば股間。しかし異常はない。ほかの性感帯なんてあったっけ?


 性感帯……性、感……帯……?


「な、なにぃぃぃぃッ!!??」


 そう! オレにはほかの性感帯もあった。乳首だ!


 それは、まるでオレの胸板から突き出しているかのように見えた。


 意外! それは洗濯バサミ!! 


 バカな――バカな、洗濯バサミが、いきなり! 何の予兆もなく! オレの乳首に!!


「うわぁぁぁぁぁッ!! オレの乳首に洗濯バサミがぁぁぁぁあッッ!!」


 こんな状況になって冷静に対処できるヤツが、果たして存在するのだろうか?


 異世界を転生し続けてきたオレとて、例外ではない。


「う、うろたえている場合でない。と、とにかく外さねば……」


 このまま無理矢理バチーンとかはずれたら痛いじゃ済まんからな。


 そ―ッと外さないとな、そーっと……。


 しかし外そうとした洗濯ばさみがグイッっと引っ張られた。


 イヤァァン! 危ない! 危険!! 乳首がもげる! やめろ!!


 というか誰だ!?  なぜこんなことを!?


 しかし、無情にも洗濯ばさみは糸でもついているかのように引っ張られる。


 んひぃ!? ややややめてください! ……払うから! 払うからぁ!!


 と、ワラにもすがるような心持ちでいると、目の間に一つの人影が現れた。


 ピンクの髪が印象的な小柄な人影。見覚えのある面影は、まさしく我が親友のそれであった。


「ピーちゃん!? マイフレンド! どういうことなんだ!?」


 応答がない。ピーちゃんは自慢のジト目でオレを見てくるが、何も言わずに手元の見えない何かを引っ張るような動作をする。


 クイ。


「や、やめろ! なぜこんなことを!? とにかく話を……」


 クイ、クイ。


「やめろ、やめろぉぉぉ!!!」


 ぐぃぃぃぃ。


「やぁめろおおおぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁあぁああ!」


 依然としてピーちゃんは無言であった! しかしすさまじい圧がある!! 今日のピーちゃんには、言い知れぬスゴミがある!! 


 そして、――ブチーンッ!!! と洗濯バサミがオレの乳首から無理矢理引き剥がされた!


UGYAAAAAAAAAAAAAAAうぎゃああああああぁぁぁぁぁ!!!!!


 もはや言語化することすら絶する激痛がオレを襲う。なぜ……なぜこのような責苦を追わねばならぬのだ。


「うぐぐぐぐ。……何故なんだピーちゃん!? どうして友であるオレの敏感な乳首にこんな真似を!?」


 いたずらでは済まんぞ! プレイだとしても対価が発生する奴だコレ!!


「……許してください心の友よ。私も苦しいのです」


 などとよくわからないことを言いながら、再び洗濯バサミだけがファンネルよろしくオレを狙ってくる。


「よくわからんが問答無用か。――だが、2度も同じ攻撃をくらうオレではない!!」


 オレは流れるような動きで両手を使い、右腕で右の乳首を! そして左手で左の乳首をそれぞれにガード!!


 これで洗濯バサミを乳首にくらうことはありえない!! くぅ~! 我ながら完璧な防御よ!!


 しかし、洗濯バサミは、無情にもオレの鼻、唇、耳たぶ、まぶたに、それぞれ襲い掛かった。


「うひぇえええ!? まさか顔にぃぃぃぃ!?!?!!」


 完全に予想外である。これはプレイですらない! ドリフだ!!


 するとピーちゃんはまた紐をクイクイとひっぱり始める。――いい加減にしろォォォォ!!!


「なぜだ……。なぜなんだピーちゃん! なぜこんなことを!!」


 おれ達は友達だったはずなのに!


「……申し訳ありません。しかたがないのです」


「なにやってんのおねーちゃん。これじゃ遊んでるだけだよ」


 そこでピーちゃんの隣に同い年くらいの背丈の子供が姿を見せた。


 それはこの前ガー様とオレで返り討ちにした「カスケード・シルバーの悪魔」ことカーちんであった。


「カーちん!? カーちんじゃないか! いやーこの前はちょっと行き違いがあったようで……ってお姉ちゃん?」


「そだよー。わたいのおねーちゃん」


 言いながら、カーちんは虚無的な瞳で隣のピーちゃんをぐりぐりと指差している。


「…………」


 ピーちゃんは何故か無抵抗だ。いぢられっぱなしとはらしくねーな?


 しかし、まさか姉妹だとは思わなかった。こうして並んでみると確かにちょっと似てるのだが、どうも姉妹と言う感じじゃないな。


「……当然です。私のジト目は私だけのチャームポイント。たとえ妹だろうとも簡単に与えるわけにはいきません」


 オレの思考を読んだのか変なところで胸を張るピーちゃん。いやそれは知らんが。 


「んなもんいらんけどー! で、んなことよりもおねーちゃん! はやくヤって!」


 妹のカーちんが後ろからはやし立てる。


「ヤってだと!? まさか、先日のアレの腹いせに、オレを始末する気なのか!? そんな……ああ、友よ。なぜ君は、悪魔に魂を売ってしまったのか……」


「いえ、元から悪魔ですので」


 そんな薄味のレスが欲しいのではない! ノリが悪いぞフレンドよ!


 ――なにやら、いつもはジト目のままハッちゃけるピーちゃんが今日に限ってテンション低めだ。


 どうやらあまりヤル気が無いらしい。


「それはそうです。私もわざわざ友人を失うようなことはしたくありません。が……普段は既読スルーと無視と舌打ちしか返してこない妹が突然姉を頼ってきたのです。ここはいいところを見せたい。なので犠牲になってくださいフレンド」


「うっさい。ダマレ。早くヤレ」


 勝手なことを言うピーちゃんに、しかしカーちんはガスガスと攻撃を加えている。


 わりと容赦がない。あんまり妹に好かれてはいないようだな?


「ウフフ……いつもは構ってくれないからお姉ちゃんうれしい♡」


 それでも血だらけのままピーちゃんが薄ら笑うのでカーちんもドン引いている。


 なるほど、大体この姉妹の関係が見えてきたぞ。姉の愛情が一方通行になってるやつね。にしてもえらい嫌われてんじゃん?


「つーかピーちゃんなんでそんな嫌われてんの? 何やったの?」


「そんなたいしたことは……。強いて言えば、軽く24時間体制で盗聴・監視・追跡・つきまといを少々。あとは日々のきゃわいい生活の記録を拡散していただけ……なんですがねぇ?」


「うーむ……なぜなのか解らんな」


 ピーちゃんならやるよね、それくらい。


「でしょう?」


「解かれよオラーッ! もういいよ変態ども! まとめて地獄へ送ってやる! お兄さんはもう終わりだよ!」 


 カーちんが最後通告を行ってくる! そんな! 待って! 


「……残念ですがここまでですね。さらばですわが心の友」


 ピーちゃんも一緒に始末されるような雰囲気だけどその辺どうなの? 


「つーか、ガー様に黙ってこんなことしていいのかい?」


 本当に問題になるぞキミたち!


「……残念ながら、公式戦で力関係が出来てしまってはこれを覆すのは至難。よってあなたを標的とするしかないのです」


「くそう……しかし、そう簡単に拉致されるオレでは……」


「無駄です……あなたは既に私の能力を受けている。我が能力『あつまれ ぜんめつの森アナイアレイション』の効果を!」


「なにぃ――――ッ!?」


 なんだその物騒な能力名は!?


「なにそれ!? つーかピーちゃんまで固有能力とかあったの!?」


「わたしはこの手の異能を自在に創作できるのです。高度戦略型ですから」


 マジかよ!? じゃあ、いつもの悪魔ちゃんズにもこういう能力あるかなぁ~?


 などと余裕こいている場合ではなかった。何か言おうにも、オレは声を出すことが出来なくなっていたのだ。


 言っておくが洗濯バサミのせいではない。それはもう外れている。原因は別だ。


「――――ッ!?」


「騒がれてもアレなので、しばらくはそうしていてもらいましょうか。今のうちにペットという名目で税関を抜けましょう」


「ビバ! 常套手段! いざ! 魔界へ! そんだけー!!」


 オレの身体はいつの間にか、オレのモノではなくなっていた。


 た、対象を強制的に変身させる能力か!?


「にしてもさすがはおねーちゃん。姑息で卑怯な手段はおねーちゃんに任すのが一番だね」


「それほどでも♡」


 多分それ褒められてないぜピーちゃん。――ってクソ! しゃべれねぇからツッコミもままならねぇ!!


「うふふ♡ やった♡ うふふっふぅ……もふもふ♡ 今度こそ本物のモフモフ♡♡」


 カーちんはご満悦な様で毛だらけになったオレをモフりはじめる。やめてください! ノー! ドンタッチミー!!


「とりあえずクマさんでいいかしら? 色はピンクでOK?」


 などとピーちゃんが言う。そう、オレの身体はオレの意思とはまるで無関係にケダモノへと変容していたのだ。


 ――てか、クマはともかくピンクは止めろ! リアルなクマのカラーがピンクだったらおかしいだろうが!!


「なに言ってんのおねーちゃん! そんなのダメに決まってんじゃん。ぶっ殺すよ?」


 カーちんが待ったを掛けてくれた。助かったぜ。


「黄色だよ! 黄色にして、あと赤い上着を着せるの!」


 ……プーさんじゃねーか!!

 

 それクマのプーさんじゃねーか! なんでだよ!? そんなリアルプーさんに成りとうないわ!

  

「仕方ないわね。はちみつはべたべたになるからダメよ?」


 仕方なくねーだろ止めろ! チクショウ! このままだと本当にオレはさらわれてしまうぅぅぅ! もしくはディズニーに始末される!!


 なんとかせな!!


 だがオレの身体はほとんどガチめの獣のようになってしまっており、喋れないばかりが思考さえままならなくなってしまっていた。


 こ、……ここまで、なのか……。


 オレは悲壮感に包まれた。まさかこんなことで――


 ――って、アレ? なんかもう悲しげなエンドロール始まりそうな感じ出してるけど、なんか……なんか平気だぞ?? 


 オレは、普通に立ち上がった。


 身体はモフモフになったままだが……なんだか、別に不都合がある感じはしない。


 むしろ、身体にはエネルギーがみなぎり、ぶっちゃけなんでも出来てしまいそうな具合だ。


「んん~? オイ何やってんだよストーカー! なんかおかしいよ。モフモフでもフカフカでもないよ!」


「おかしい……本来ならとっくに……」


 悪魔たちが困惑したような声を上げる。


 へぇ? なんか知らんが、どうやら想定外のことが起っているらしいな? 


 そこでオレは――本能のおもむくままに咆哮を張りあげ、悪魔たちを吹き飛ばした。息を吹きかけるだけでモノが吹っ飛ぶぜ!


 今までにないパワーだ!


「んわー!? なんなの!? モフモフは!? なんなんだよオラー!!」


「違う――。これは私の能力ではない! これは」




「――その通り。その力は、私が彼に与えたものだからです」




 答えは――オレの背後からもたらされた。眩い月の光とともに。


「貴方には、すでに力がある!!」


 後光をまといながら、夜の主たる神がその姿を現す。


「おお、ガー様! マイハニー!!」


 来てくれたのかマイガッデス!


 神は、ガー様はオレに微笑みを向けてくれる。


「すべては予見していました。悪魔が来たことも、アナタを狙うであろうことも、そして――今日のお土産がチョコレートだということも!!」


「何を目当てに出て来てんだよアンタ!!」


 あ、喋れる。オレの身体変化は完全に半獣人状態で安定したようだった。


「それがあなたの新しい力です――その力の名は『月下の恋人ウルフガイ』!」


 ウルフ? そうか、狼は月と密接な関連を持つ獣。この力は月の女神の加護によるものなのか!


「今のあなたは、月光と月の引力によってほぼ無限の活力と再生力を得ているのです。――すなわち、月の女神である私の影響下にある限り、貴方は神魔にも劣ら完全な不死の力を手にするのです!」


 それが、――ガー様に与えられたオレの固有能力!!


 勝手に狼男にされたことに想うことはあるが、コレはコレで悪くねーんじゃねーの?


 特に、悪魔にも好き勝手されなくていいってのは気に入ったぜ!!


「んがーッ! このクソ女神!! ……おいストーカー、なんとかしろよ!!」


「……これは想定外。いえ、いい意味でもあまりに想定外でした。ここから挽回するは難しいです。むしろ賞賛します。ぶらぼー」


 などと言いつつ、ピーちゃんはおててをペチペチしている。


 ハハハ。ずいぶん余裕だねマイフレンド?


「さてキミたち……何か言う事は無いかなぁ?」


 オレは喉をグルルルルゥ……と鳴らしながら威圧する。今回ばかりはちょっとやり過ぎったと思わないかい? オレはたじろいで身を寄せ合っている幼女に詰め寄った。


「うううう……お、おねーちゃん。あとは任せた!」


「承知! 妹に手は出させません!」


 ――が、聞くが早いか、オレは問答無用で姉妹を2人とも捕獲し、縛り上げてしまった。


「あーッ!!」


「はやい……不覚ですね」


 高度戦闘型のハズのカーちんでも反応しきれないスピード! コイツは本物だぜ!


「さーて、つーわけで今回も説教部屋行きってことでOK?」


「仕方ありませんね……でも妹と一緒なのはちょっとうれしいです♡」


「んぎーっ! このバカぁ!! この役たたずぅぅ!!」



 


 そうして、悪魔たちは哀れにドナドナされていきましたとさ。まーこれで姉妹仲が良くなるといいですね。……逆にこじれそうな気もするが。

 

「見事です。すでに新しい力を使いこなしていますね」


 などとガー様が声を掛けてくる。


 しかし、オレは不満を浮かべた顔でガー様を見る。今回の件、少々不可解な点が無いでもない。


「いえいえ、そうじゃなくてねガー様。なんで能力与えた時点で言わないのさ?」


 先にこの「月下の恋人ウルフガイ」のことを知ってりゃあ、こんなことにもならなかっただろうに。


「いえその……つけたはいいですけど、「月下の恋人」なんてよく考えたら恥ずかしかったので♡」


 すると、この女神はそんな事を言って恥ずかしげに顔をそらす始末。


 まったく、やってられないね。


「……そうか。では土産はなしだ」


「ッ!? なんでですか!?」 


 このままだと主導権を取れる気がしねぇからだよ!!


「……」


「な、なにさ?」


 するといったん泣きそうになっていたガー様はハッとしたように表情を変えた。


「なるほど、そういうことですか……構ってほしいのですね?」


「は?」


 何言ってんだてめー。


「だいたいわかりました。お土産を出し渋ることで、遊んでほしいのですね? よいでしょうよいでしょう」


 などと、この女はオレをなでながら言う。やめろ! こちとらペットじゃねーぞ!!


「そうですね。本物の狼ならもっとふわふわのハズ……ではブラッシングからにしましょうか♡」


「ふざけ……ハウ!?」


 しかし、なんということだ! オレの身体は命令に従ってしまうのだ!!


「こ、れは……まさか!」


「うまくいって良かったです。これで2度と悪魔にちょっかいを出されることもないのですから」


 オレはまさか本当に神の下僕になってしまったというのか!?


「まぁ、前からそうだったはずなのですが……あなたはどうも自由すぎたかなと思いましたので……ね♡」


 ね♡ じゃねーよ! これじゃあ悪魔に拉致られるのとあんまり違わねーじゃねーか! 助けて! ピーちゃん! カーちん! ヘルプミー!! 





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もう嫌だ! 異世界無限転生!! 何回転生させる気だオラァン!!! どっこちゃん @dokko-tyan

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