第11話 いつの日か きっと

「あの日の親衛隊はすごかったな~『ベスト・スタジオ』の伝説回になったと思う。きっと後世まで語られるよ」

「そんな、言い過ぎよ」

「いや、絶対そうなるよ。今だって『世界一熱い親衛隊がいるアイドル』だって雑誌やテレビで紹介されてるし。それに、親衛隊隊長の岡田さんだっけ、『ひかりちゃんは俺たちが守ります、“姫”を守るのが親衛隊だから』って言ってたんだろ?」

「ええ。本当アイドル冥利に尽きるわね」

「おかげで不穏な噂はすぐに消えたしな。親衛隊の人たちには本当に頭が上がらないよ」

 進也の言う通り、今では私と彼の噂話はすっかり下火になり、カミソリ入りの手紙の手紙が届くこともなくなった。


 私と進也はあの日約束した通り、デートに出かけていた。映画を観て、アイスクリームを食べて、散歩をして。憧れたデートが現実になった。ドラマに出て演技の勉強をしたおかげか、誰にもアイドルの香坂ひかりと樋口進也だと気づかれなかった。

 夜はまたお互い別の仕事がある。私も”山本香奈“から”香坂ひかり“に戻らなければならない。

 分かれ道に来たとき、進也は私を振り返った。

「今日は楽しかった。またいつか、出かけような」

「ええ。約束よ」

「指切りでもする?」と言いかけたときだった。私は急に抱きとめられ、唇を奪われた。

「好きだ、香奈——愛している」

 少し掠れた声が耳元で響く。私は頬をバラ色に染め、ゆっくりとうなずいた。

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