第10話 夢みるLady

『――さあ次のお客さんは香坂ひかりちゃんです。いらっしゃい、なんだか最近素敵なファンレターを頂いたんですって?」

「そうなんです。デビュー当時からファンだって。中学生の男の子でね、今日歌わせていただく曲は、その子が一番好きだって書いてくれた曲なんです」

「まあ、そうだったの。それはうれしいわね。じゃあ、その子のためにも頑張って歌ってらっしゃい。スタンバイお願いします――それじゃあ,香坂ひかりちゃんで『夢みるLady』,どうぞ!」



 本当は少し怖かった。また卵を投げつけられるんじゃないかって。でもそんな心配は杞憂だった。

「L・O・V・E lovely ひかり! cutely アイドル ひかりが一番!」

 私が一節歌うたびに、親衛隊の皆さんが熱い熱いコールを入れてくれる。こんなにそろっているコールは初めてだった。他の観覧者や司会者、カメラさんまで驚いている。私は夢中で歌い続けた。


 いつか 本当の恋がしたい

 いつか誰かを愛したい

 色づく季節ときを待っているのよ 

 someday   someday   someday

 夢みるLady


「ひかりは俺らのエトワール! WE LOVE ひかり GO~!!」


 曲が終わり、マイクを司会者に返したとき、私の目は涙で潤んでいた。今度は幸せな涙だった。


「ひかり!今のすごかったね!」

「ああ。あんなに統制の取れている親衛隊は初めて見た」

「ひかり!!」

 進也が走ってきてハイタッチを交わす。パンっと快い音が響いた。

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