第9話 めざめのとき
『ベスト・スタジオ』の収録の日。いつもより早く楽屋入りし、衣装を身に着け、ヘアメイクさんに髪を整えてもらい、念入りに準備していた。今日の衣装は淡いピンクのパフスリーブのドレス。いわゆる一張羅だ。
「わあ、ひかり!そのドレス可愛い!」
開口一番褒めてくれたのは花梨だった。
「親衛隊の人たちだって全員惚れ直しちゃうよ、きっと。そ・れ・に・進也だって」
「あら、進也も出るの?」
「そうだよ。というより、同期四人、全員そろってだよ」
「そう……」
「……やっぱり不安?」
「そう、かも」
「――ひかりはさ、どうして進也を好きになったの?」
「え?」
「“アイドル”の樋口進也じゃなくて、”ただの”樋口進也に惹かれたんでしょ?それにひかりだって……”香坂ひかり”じゃなくて、”山本香奈”として好きになったんじゃないの?」
言葉に詰まった私に花梨はまくし立てた。
「じゃあ、香坂ひかりは堂々としててよ!今は”山本香奈”じゃなくて、”香坂ひかり”でしょ!ファンや親衛隊だってそう思ってるんじゃないかな」
「――ええ、ありがとう花梨自分がどうしたいのか分かった気がするわ」
顔を上げ、しっかりと前を見る。”香坂ひかり”のめざめだった。
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