出立
夜と朝。その境目。太陽が顔を見せ始めるその頃。
冬が近いこの季節、朝晩の冷え込みは増す一方。そろそろ防寒具を新調しないとなと思いつつ、私は町の検問所へと向かっていた。
始発の乗り合い馬車に乗るためにこんなに早起きをした。眠たさから自然と欠伸が出てくるのは、もう仕方ないだろう。
「さっむいなぁ」
はぁと吐いた息は白い。冬はもうすぐだ。
広場を通ると、今日も変わらず噴水が動いていた。
この一週間、私が歌ったり演奏をした場所。なんだか愛着が湧いて少しここで時間を潰そうと、縁に腰かける。
今回は色んな人に出会ったなと一週間の出来事を振り返る。優しそうな奥さんと寡黙な旦那さんの夫婦、酒場で会った不思議な男、手当てをしてくれた写本工房の見習い青年、転移の魔紙をくれた魔法師の女性。
旅には出会いと別れがつきものだ。良い縁もあれば、悪い縁もある。今回は、良い縁ばかりだった。
「久しぶりにいい思いをしたなぁ」
つい嬉しくて口元が緩くなる。
そんなことを考えながら、ぼーっとしていると、東の方から光が見えた。朝日が昇る時間だ。
太陽の眩しい光が私を照らす。眠い体もこれで目を覚ましてくれるだろう。
「よーし! それじゃあ、行きますか!」
勢いよく立ち上がり、伸びをする。
鼻歌を歌いながら、旅の続きの一歩を踏み出す。
私の歌で起こる、色んな人との出会いに胸を高鳴らせて。
繋がりの歌 悠季 @y_im53
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