第17話 新たな旅立ち


「俺も最強を用意した」

 ドキドキ……

「サミエルだ」

「どぉ〜も〜。ヨロシクね!」

 ……ん?……えぇ!!?


「えーーーー!?」

「なに〜、ボクじゃ不満?」

「まさか!不満なワケない!けど!」

「最強でしょ〜?……私も行きたいって言ったんだけど」

「ナミに抜けられたら困るんだ」

 いや、よくジールがサミエルを選んだな、っていうか、よくサミエルが了解したなっていうか……。

「コイツなら、熟練の冒険者二人分だからな」

「サミエル、いいの?」

「ん〜、久しぶりに旅するのもいいかな〜って……」

「ふふふ、あとは大人の事情、ってやつよ!」



  *** 大人の事情 ***


 ───数日前

「ナミ、どうだ?アイツらは」

「順調よ〜!そろそろいいんじゃない?──ところでジール、冒険者は決まったの?」

「考えたんだが……他に居ないと思うんだ……」

「え、誰!?」

「サミエルだ」

「……は!?サミエルぅ〜〜!?」

「強さは当たり前だが、ルーの安全が……まあ、信用出来るかどうかだな。そうなると……だが、サミエルが引き受けるとは思えないが」

「な〜るほど〜。……たぶん大丈夫よ。私に任せてくれる? ……あのね───」


「──サミエル、頼めないか?」

「はぁ〜?ヤダよ面倒くさい……」

「……酒場を造りたいそうだな」

「……ナミか。で?……引き受けないと造らせない、とでも?」

「そうじゃないの。見ての通り、村の周囲は畑でしょ。サミエルが考えてるような、派手で大規模な酒場を造るなら、川向こうになるわ」

「居住区から離したいしな」

「ま、そうなるね〜。ボクも向こう側がいいな。広いし……のどかな風景の中じゃ、ボクのイメージに合わないからね〜」

「川向こうの開発は、橋が出来てからになるでしょ?」

「橋が出来るのに、早くても一年はかかる」

「……その間、お守りをして来いってこと?」

「……川向こうの街の整備は、任せる」

「ん?」

「サミエルの好きにしていいって!」

「……マジで」

「……マジだ」

 ナミが二人の手を取り、二人は固く手を握りあった──。


 ******


 この村は平和だ。

 なのに僕は、わざわざ危険な外に出て行く。何故だろう?

 サミエルに「そりゃぁ、退屈だからだろ〜?」と言われた。……その通りだ。そんな、僕のワガママで、皆に迷惑をかけていいのかな……。

 実際にジールから出発の許可を貰ってから、なんとなく落ち着かない。


 僕はルルーと、街の教会に行った。

 神父様とシスター・メリーに暫く留守にする事を告げ、胸の内を語った。

「……良いと思いますよ。気をつけて行ってらっしゃい」

 シスターはいつもの穏やかな瞳で言ってくれた。

「ヨハン、ルルー。行く先々で、色々な事を知るでしょう。その経験は、あなた達の、そして人々の為になると信じています」

「ヨハン……世界は広く、我々の手は小さい。全てを救うことは不可能かもしれません。ですが、己を責めてはいけませんよ。あなたもまた、神の子の一人なのですから。あなたの平和を、神に祈っています」

 僕の、平和、か。

 それからマリアさんの墓に行く。

「お母さん、私は平気だから、お父さんを宜しくね!」

 ……ルルー、逞しくなったね……。

 ──マリアは幸せだったと思うよ──

 ふと、あの日のサミエルの言葉がよぎった。

「お兄ちゃん?……大丈夫よ、お兄ちゃんは私が守ってあげる!」

「……う、うん……」

 僕もちゃんとルルーを守ります、マリアさん……。



「ちゃんと水筒持った!?」

「もうナミ、大丈夫よ。私、水魔法で出せるから」

 ──いよいよ出発の日。なんだかナミが落ち着かない。

「あとコレね、お小遣い」

 ……お小遣いって額じゃないな、それ。

「……ナミ、金は俺が渡したぞ」

「いいじゃない!あって困るもんじゃないわ!」

「も〜ナミ〜、ジールより過保護じゃないか」

「!アンタは一緒に行けるからいいけど……!」

 結局、いざとなると心配なんだな、ナミ。

「ヨハン、コレは俺から餞別だ」

 フレドが一振りのナイフを渡してくれた。古そうだけど、鞘から抜くとギラリと刃が光る。両刃のナイフだ。

「昔、俺が使ってたモンだ。中々の技モンだぞ。使ってみてくれ」

「ありがとう!フレド!……皆に宜しくね」

「ルー、頑張れよ。……サミエル、ヨハン、宜しく頼む」

「はいよ〜」

「お父さん、行ってくるね!」

「行って来ます」


 ルルーの一人立ちの旅。

 僕は……僕は、旅をしながら探そう。

 僕に出来る、世界の平和を。




 ────────────




 ここでひとまず終了とします。

 もしかしたら第二章を書くかもしれません。

 稚拙な文章を最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。


















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平和な世界 ぱぁと @sinzow

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