第4話 第2の事件

原田は警察庁に行く前に、佐原に連絡を入れた。

「忙しいのにごめんね」

 原田と合流した時、佐原が謝罪を入れた。

「いえ。管理官が謝ることないですよ」

「白井警視監は、敵が多かったんですか?」

獅子沢が問う。

「うん…あれだけの人事を受けたら、敵に回さない方がどうかしてると思うくらいの人事をしてたからね」

「何か昔あったんですかね」

「少なくとも、現場経験は少なかったみたい」

「え?」

 野田と獅子沢の二人が疑問を発した。

「警察学校卒業後に、地元の所轄署副署長をやって、それから県警捜査2課長、警視庁機動捜査隊管理官、警視庁第2方面本部長、警察庁刑事局組織犯罪対策課管理官を経て、公安局長になったらしいです」

「出世街道まっしぐらってところか」

野田が言うと

「少ないどころか無いじゃないですか!」

獅子沢が声をあげる。

「当時、県警捜査二課は、詐欺の一斉検挙に力を入れていてね、課長も参加してたみたい」

「あ、そうなんですか」

 そんな話をしながら辿り着いた先は公安局長室だ。

「後任は誰が?」

「外事3課の吉江警視長だと思います。次期課長と期待されてましたし、白井警視監が異動して来なければ、局長だった人だと言われてた程でしたし」

「なるほど」

野田が頷いたその時

「警部!」

 パソコンを触っていた獅子沢が叫ぶ。二人が行くと、そこにはメール画面があり、目を疑う文面があった。

「「今度妙な人事を受けたら、殺してやる」!?」

野田が読み上げ驚嘆する。

「日付は…一昨日の深夜か。ってことは」

「殺人予告ですね」

獅子沢が言う。


 警視庁に戻ると、全員揃っていた。そこで先程得た情報を公開した。

「えぇ!?」

1番初めに藤原が声をあげる。

「警備局長に殺人予告?!」

続けて茅野が言う。

「はい。これが、そのコピーです」

 野田が茅野に渡す。

「それで、他には?」

「実は、これを裏付けるような物がご遺体の胃の中から出てきました。先生」

 茅野が向けた目線の先には、男性が立っていた。

「東都監察医務院で監察医をしている柳澤光太郎です。これが、ご遺体の胃の中から出てきました」

 証拠品が入った証拠品袋を出した。

「これは、旭日章?」

伊藤の言葉に

「ええ」

と柳澤が頷く。

「この物証に、そのコピーを証拠として並べれば、怨恨による殺人が見えてきます」

「そうですね。それで大塚さんからは?」

茅野が問うと

 「恋人の宮下悟から現場に呼び出されたとしか聞けてません」

古岸が伝える。

「そうか。その宮下については?」

「はい。調べてみたところ、宮下悟の携帯から、公安局長が亡くなった時間帯に、大塚さんにメールが送られていました」

「メール?」

「はい。しかし、送信予約もあるので、死亡推定時刻に送ってなくても送信予約を利用すれば届きます」

「なるほど。内容は、すぐに今から言うところに来てくれってところか?」

「はい」

「分かった。では残りは明日にして、今日は上がろうか」

「わかりました」

茅野の声に皆が答える。


 会議が終わったところで

「あー疲れた~」

 古岸が背伸びした。恵もリラックスしている。

「んじゃ、手作りケーキでも食べるか?」

 磯城神がそう提案してきた。

「え?」

 特殊捜査の二人が?マークを上げてる中、係員は納得している様子だ。


「ここです」

 磯城神が案内したところは、一軒家で、表札には「磯城神朔也 奏恵」と書かれている。

「磯城神さんのご自宅ですか」

「ええ。どうぞ」

 案内されて家に入る。と、夕飯の時間帯だからか、美味しそうな匂いが漂う。

「お帰りなさい。あら、恵さんに廉さんも」

「おかえりー!あー!めぐ姉に廉にぃちゃんだ!」

 台所から顔を出したのは、女性だ。和室から2人の子どもが駆け出してくる。磯城神が

「妻の奏恵です。それから、娘の美晴と息子の大輝です」

 腰周りに抱きつく子らの頭を撫でながら紹介した。

「初めまして。磯城神奏恵です。そちらはで新しい、仕事の仲間?」

 奏恵が朔也に聞く。朔也より先に

「刑事局特殊捜査係の原田と申します。こっちは獅子沢。捜査一課とある事件で合同捜査をしています」

「なるほど。そうでしたか。どうぞ上がって下さい」

 通されたリビングには、美味しそうな匂いを発していた料理が、テーブルの上に並べられていた。

「美味しそうですね。あれ?8人分ありますが」

 すると、磯城神が

「どうぞお座りください」

 着席を勧めた。それから詳しい話を聞かされた。

「え?奥さん、昔パティシエされていたんですか?!」

 獅子沢が驚く。

「ええ。偶にケーキを作ってくれるんですよ。それでお二人にも奏恵のケーキを食べていただけたらなと思って。奏恵に連絡したら、夕飯も一緒にどうってことになって」

「え?よろしいんですか?折角の御家族の団らんを私たちが邪魔してしまって」

「大丈夫ですよ」

 奏恵が席に着いたところでいただきますをして、夕飯を食べ始める。

「私、警察のことよくわからないんですけど、特殊捜査係って?」

 奏恵に聞かれた。説明は野田が買って出る。

「あ、はい。半年程前に新設された部署で、警察庁刑事局長直轄の捜査組織なんです」

「第5係と違うところは?」

「第5係は捜査一課の中で幾つか分けられている係の1つで、特殊捜査係は刑事局に編成されている部署なんです。第5係は、捜査一課の担当する事件を扱いますが、我々特殊捜査係は、刑事局の管轄する部署で起こったすべての事件を担当することができるんです」

「すごい部署なんですね」

「ええ。でもホントにすごいのは第5係ですよ。何たって捜査一課が管轄する事件の中で1番凶悪な犯罪を扱う組織なんですから」

「え?あなた、そんなにすごい部署で捜査してるの?」

 驚いている奏恵に

「奏恵さん、ご存知なかったんですか?」

 獅子沢が驚いてる。

「ええ」

「僕が聞いた話しでは、5係は「初動捜査から犯人逮捕までどんな事件も受け持つ」だそうです」

「へぇ」

 奏恵と獅子沢の声が重なった。すると野田のスマホが鳴った。

「はい野田です。………え?わかった」

 切ると

「磯城神さん、白井局長の現場近くで男性のご遺体発見の通報です」

「わかりました」

「事件ですか?」

古岸の問いに朔也は頷く。

 磯城神は箸を置き、野田はスーツを着込み、

「奏恵、ちょっと行ってくる。廉はここにいろ。美晴たちのこと頼んだぞ。恵は来てくれ」

「分かりました」

「はい」

古岸と恵が返事をする。

「獅子沢もここに待機だ」

 言い残して現場に向かった。

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刑事部捜査一課(仮題) 金木犀 @kinmokusei02316

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