僕はただの雨男だった

白ラムネ

短編

「また雨か.......」


バイト終わりの帰り道、傘を持っていなかった僕は雨に濡れる体を気にすることもなく歩いていた。


慣れていたんだ。



外に出るのは好きじゃなかった。

友達と遊びに行ったときも必ずと言っていいほどに予報外れの雨が降る。

家族旅行だってそうだ。

みんな暗い顔をしてしまう。

それを見るのが嫌でたまらなかった。


だから、外に出るときは一人を心がける。

誰にも迷惑かからないしね。


自然のシャワーで全身を濡らしながら歩いていく。

僕は今、どんな表情をしてるだろうか。

メガネを流れる雨粒を見ながら、立ち止まった。


「あれは........」


車の通らない交差点で女の子が立っている。

彼女も傘を忘れたのか、何も持たずに全身を濡らしていた。

彼女はおぼろげに空を見上げている。

僕は彼女の横に立って、信号待ちをした。


「雨って好きですか?」

「え?」


いきなり彼女が質問してくる。

僕が見ると、彼女は何かを隠すようかのように微笑んでいた。


「どちらかと言えば嫌いです」

「そうですか........」

「あなたはどうなんですか?」

「私ですか?」


彼女は前を見つめながら答える。


「私は好きですよ」


僕は彼女から目が離せなかった。

僕は今、どんな表情をしてるだろうか?


「何で?」

「雨って何もかもを洗い流してくれるんです」


何もかもを、か........。

彼女がこちらを見て、笑顔になる。


「あなたは.......」


僕の問いかけを聞く前に彼女は交差点を歩いていってしまう。

僕は足が動かなかった。

彼女が見えなくなるのをただ見るしかできない。

雨で冷たかったはずの体も、不思議と熱く感じた。



僕は今、どんな表情をしてるだろうか?






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僕はただの雨男だった 白ラムネ @siroramune

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