これは、少女が過去に習っていたピアノのことを思い出して、弾こうとする物語です。しかし、ピアノがある音楽室には先客がいて、とても上手にピアノを弾いています。
先客は少し意地悪な少年。そして彼は少女の心を知ってか、自分の前でピアノを弾かせようとするのです。
最初から最後まで少女の心の葛藤が巧みに描かれ、ピアノから奏でられる音も文字から聞こえてくることから、自然とお話の中に入り込んでしまいます。
もし、読者の方の中で、少女と同じような気持ちを持った人がいたならば、きっと読んだ後こう思うことでしょう。
――ピアノが好きなら、弾いたらいい。
弾くのが下手でもピアノを恋しく思う人たちへの、優しい物語です。