立派になったきみに
@Aile28
第1話 どう思うのかは別として
随分と背が伸びた。まだ何かスポーツをしているのだろう。程よい筋肉がついた体つきだ。
口も達者になった。高い声だったわけではないが、もっと低くなった。もちろん、それはいい意味で。
笑った顔は変わらない。目が細くなって、白い歯が少し見える。
周りに気を遣えるところも昔と一緒。身内じゃなくてもありがとうがちゃんと言えるのは本当に大事だと思う。
こんなにも、期待以上に成長してくれたきみに。
あんなにも、沢山迷いながら純粋に、ただ真っ直ぐ向き合ってくれようとしていたきみに。
そんなにも、今もまた愚直に目を見て話そうとしてくれているきみに。
こんな僕から言いたいことは、言えることは、ない。
きっと何を言っても懺悔とか、後悔とか、そんなものにつまらないもの繋がってしまいそうで。
繋がってきた今とともに、きみの過去を否定してしまいそうで。
もし、敢えて僕からの、拙く耳障りのいい、どこにでもあるような言葉が、本当に必要なのであれば。
僕からはきみにありがとうと言いたい。
ありがとう。父親にしてくれて。そう見てくれて。受け入れてくれて。きみの誰かを真っ直ぐ受け入れようとするところが本当に素敵だと思う。
ありがとう。卑屈で、子どもっぽい僕に、ひたむきに向き合ってくれて。きみの寛大な心は、きっとさらに大きくなっているのだろう。
ありがとう。覚えているかはわからないけれど、結果としてちゃんと約束を果たしてくれて。きみの優しさが誰かをずっと支えてきたし、これからも誰かを支えていくことができると信じてやまない。
家族ではない。だから僕から言えることはこのくらいだろう。
でも、心から願う。きみがくれたものはとても大きい。人生においてそう何度も受け取ることがないものだ。
だからこそ、どうか元気で。ありきたりでも満ち足りた幸せを感じられる人生を過ごせるように、思い出しては祈るようにしてる。
立派になったきみに。ありがとう。
立派になったきみに @Aile28
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます