4 終焉

 奇妙なる雄叫びが上がると同時に、Cは巨人の体に包み込まれていた。Cは始め何が起こったか分からなかった。だが、巨人の体の隙間から侵入してくる熱波によってそれを知った。核の炎である。

 巨人達はその体を幾重にも重ねてCの上に覆い被さっていた。

 人類の最終兵器たる核ミサイルは、巨人達の頭上に何本も降り注ぎ、そして空中において爆発し続けた。その炎は巨人達の肉を焼き、その骨を焦がした。

 Cは彼らの胸の中で、巨大なる、無敵に思われた巨人達が一人、また一人と息絶えるのを感じた。


――友よ、ここまでである。


その声は過去の声に比べ遥かに弱々しくなっていた。

  

――我らは神の前に戻ろう。あの永遠の牢獄に帰る時が来たのだ。

 

 Cはそうして思った。Cをこの今において、

 Cを救済しているのは存在であると。

  

――巨人達よ、我はお前達の存在を肯定する。お前達不条理の存在を、お前達   

   破壊の存在を。そして、お前達の存在の存在を肯定しよう。

 

――存在の存在……。おお、我が友よ! ならば我らもまた肯定しよう。お前の存在   を!


 存在とはその存在が潰えるその時まで、決して否定され得ぬ絶対不可侵の存在、存在とは唯一にして崇高なる存在。存在、その肯定こそが永劫なる救済への道なのだ。

巨人達の肉は削ぎ落ち骨は朽ち、その魂はあの暗き牢獄へと繋がれていった。Cの目の前には巨人の大いなる存在があった。そしてCが目を瞑ると、巨大なる世界の存在、その腕の中に抱かれ万感なる幸福と愛の情念が沸き起こった。世界は存在の内に帰り、存在の中に満たされていった。

 やがて焼け焦げた巨人の骨の中からCは這い出した。Cはその二足の義足を巧みに使って立ち歩き、巨人の骨に寄りかかると、やがてその場に座り込んだ。Cは空を眺め、こちらに向かって二機のヘリコプターがやって来るのを認めた。おお、人間達よとCは呟いた。

 防護服を着た兵士が二名焦土と化した大地に降り立ち、巨人の骨の前にやって来た。二人は銃を構えながら、巨人の死亡を確かめていった。そして二人は巨人に寄り掛かり、死んでいる男の存在を認めたのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巨人の復活 ナナシイ @nanashii

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ