SFであり、巨大なスペクタクルがあり、哀しいドラマがある。
しかし何よりも感じたのは、作者の生への全肯定。世界は不条理に満ちていて、その無慈悲で暴力的な不条理は人間も傷つけ環境も破壊する。だがその抵抗し得ない不条理があるからこそ、人間は大切なもの、守りたい何か、達したい目標、築きたい未来を愛おしみながら日々を必死で生きるのかもしれない。
不条理の存在もまた不条理。しかしまた、それらをも肯定することこそが世界の全存在を肯定することであり、自らの存在、大切なものの存在を肯定することと同義なのだと、この物語を読んだ読者は改めて思い至るだろう。