セフレと恋がしたい

ソア

セックスから始まる恋もある

 ホテルの一室に、甘い声が響く。恥ずかしいのか両腕で顔を覆って表情は分からないが、締め付け具合で気持ちがいいのかはわかる。私が彼女の1番弱い所を刺激すると、彼女は何度目かの絶頂を迎えた。息は荒く、汗と愛液でお互いにびちょびちょになってしまっている。

「お風呂、入りましょうか。有彩さん 」

 名前を呼ぶと静かに頷き、起き上がらせてと言うように手を伸ばす。立ち上がらせて2人で裸のままお風呂へと向かう。シャワーを浴び、湯船に浸かると呼吸が整ったのか有彩さんが口を開いた。

「また明日も仕事……癒しが欲しい 」

「セックスしたじゃないですか 」

「それとこれとは話が別 」

 有彩さんは社畜のため、大体いつも同じ事をボヤく。確かに、仕事終わりにホテル行って起きたら仕事なんて、疲れるばかりだ。2日に1回のペースでシていたら、体が休まるはずがない。

「会うペース、減らしますか? 」

 仕方がないことなんだ。有彩さんの体の事を考えたら、そうするしかない。有彩さんが喜んでくれるなら、それで構わない。

「んー、それでもいいんだけど 」

 少し考えるような素振りをみせたと思った直後、私の頭に手が乗せられ、優しく撫でられる。

「こんな寂しそうな顔してる子、放っておけないから 」

 そう言って、笑いかけてくれた。その顔に一瞬だけ見惚れ、すぐに我に返る。きっと、今の私の顔は茹でダコのように真っ赤なのだろう。

「……有彩さん。もう1回シましょうよ 」

 私は恥ずかしさを紛らわすためにお風呂に入ってびしょ濡れの、有彩さんの秘部に指を滑らせる。

「ちょっと、私明日仕事だって……ンッ 」

 片手を握り、顔を完全には隠せないようにする。私の恥ずかしい顔を見られたんだ。私だって、彼女の恥ずかしいがる顔を見たって構わないだろう。

 結局、この後3戦ほどして2人とも疲れ果てて眠ってしまった。

 目を覚ますと、そこに有彩さんの姿はなかった。仕事に行ったのだろう。テーブルの上にホテル代が置いてある。私も、帰ってバイトの準備をしなければ。スマホを手に取り、時間を確認しようとすると、有彩さんからのメッセージが何件か溜まっていた。

『寝坊して遅刻ギリギリになっちゃったじゃん 』

『次会う時、覚悟してなさい 』

 思わず、口元が緩んでしまった。

「次会うのは、土曜日の夜ですねっと 」

 つまり、その日の夜は寝かさないと言う意味だろう。こんな会話を毎月のようにおこなっているため、さすがに読み取れるようになってしまった。多分この日の夜は居酒屋で呑んで、そのままホテル、日曜日の夜まで一日中スるのだろう。

 やばい、今から楽しみすぎてニヤけが止まらない。

 私は緩んだ頬を元に戻せないままシャワーを浴び、帰宅した。きっと私は、有彩さんの事が好きなんだろう。でなければ、こんな気持ちになるなんて変だ。けれど、有彩さんは私の事をセフレとしか見ていない。恋愛感情なんて、きっと向けられていないのだ。もし私が好意を向けているのに気づかれてしまったら、今の関係が崩れてしまうのではないか。そう考えると、緩んでいま頬が、逆に強ばってしまう。

「それは、嫌だなぁ 」

 自室で呟いた言葉は、響くことも無く静寂へと消えていった。

 夕方。バイトのため居酒屋へ行くが、どうしても仕事に集中することができなかった。もし、有彩さんと恋人になったら、どんな生活になるのかを妄想したり、関係が崩れてしまったらどうなってしまうのかを妄想してしまい、普段はしないミスを連続でしてしまった。

「佐和、お前疲れてるのか? 」

 閉店時間になると、店長に呼び出された。

「いぇ…… 」

「まぁいい。お前、明日と明後日休め。ミスばっかりされたら、こっちも困る。しっかり休んだ後、次のシフトの日に来い 」

「はい。すみませんでした 」

 重い足取りで家に帰り、ベッドに倒れ込む。お風呂に入る気力すらない。

 私のせいで、バイト先に迷惑をかけてしまった。そもそも、なんで急にこんな気持ちになってしまったのだろうか。今までこんな事なかったのに。

 考えているうちに眠ってしまったらしく、気がついたら金曜日の朝になっていた。特にやることは無い。いや、やる気力がない。昨日入れなかったのでお風呂だけ入り、またベッドに横になった。この日は、特に何も無かった。

 楽しみにしていたはずの土曜日。何故か胸が痛い。有彩さんにバイトが休みになったとメッセージを入れておき、夜に備えて支度をする。支度を終えるのと同時に、メッセージが返ってきた。

『そうなの?じゃあ、ご飯食べに行こ。私、5時には終わるからよろしく 』

 5時か。まだ少し時間がある。支度も終わってしまったし暇になってしまった。

「散歩でもしてこようかな 」

 せっかく有彩さんに会うのに、下がりきった気分のままなんてもったいない。少しでも体を動かせば、気は紛れるだろう。外に出て、ある場所をめざして歩を進める。

 ちょうど5時ごろ。私は有彩さんの職場の前にたどり着いた。スマホを確認すると、もう終わるとメッセージが届いていた。

「あれ?待っててくれたんだ 」

 数分待つと、同僚さんと一緒にスーツ姿の有彩さんが出てきた。

「はい。いつもは待たせてるのでたまにはと 」

「私スーツのままだけどいいの? 」

 そういえば、着替えの事を考慮していなかった。でも、スーツ姿も中々綺麗だ。

「問題ないです。さ、行きましょう 」

 熱くなった顔を見られないように急ぎ足でレストランの方へ足を運ぶ。私の心臓の音は、いつもよりも少しうるさい。

 ピークより少し早いためか、レストランにはあまり人がいなかった。

「結構空いてるもんだね 」

 いつもなら、そうですね〜と軽く流せるのだが、言葉が出ない。

「あの、有彩さんに相談があるんですけど 」

 代わりに、別の言葉が口から漏れてしまった。少し恥ずかしくなってしまい、俯いてしまう。

「何よ? 」

「私、好きな人が出来たんです。でも、勇気が出なくて…… 」

 予想の斜め上の相談だったのか、有彩さんは目を丸くしてしまった。

「貴女、精神年齢高校生くらいなの? 」

 いや、違う。これはきっと予想の斜め下の相談だったんだ。

「違います!でも、こんなの初めてで…… 」

 また、胸の当たりが痛くなってきた。

「……分かった。相談に乗ってあげる 」

 少し呆れたようにため息を吐き、承諾してくれた。やっぱり優しい。

 私は、好きな人の事は隠したままありのままに伝えた。勇気が出ないこと、関係が崩れたた時の不安、そして本気で好きなこと。顔から火が出そうなほど恥ずかしかったが、何とか説明しきれた。

「告白すればいいじゃん 」

 即答された。真顔で。

「出来ないから相談してるんですよ 」

「出来ないじゃなくて、するの。自分の気持ち伝えなきゃ相手はわからないって。だから高校生って馬鹿にされるの 」

 馬鹿にしてきたのは有彩さんなんだけどなぁ。でも、相談してよかったと思う。そんな簡単な事だったんだって、気付かされたから。

「さ、早くご飯食べて目的の場所に行きましょ。きっと、今日で最後になるわ 」

 この人は多分、私が恋人を作ったらの話をしている。でも、それは違うんですよ有彩さん。だって、私が好きなのは……

 舌を絡ませ、唾液が混ざり合う音がする。食事の後、私たちはいつものホテルに直行し、シャワーも浴びずに体を重ねていた。

 有彩さんも普段より積極的に舌を絡ませてくれている。

「触りますよ 」

「ン…… 」

 秘部を軽く弄ると、有彩さんは顔を隠そうとした。しかし、私はそれを制止する。

「全部、見せてください 」

 頬を真っ赤に染めあげ、溢れそうなほどの涙を貯めた顔で、静かに頷いた。

「可愛いですよ。有彩さん 」

「耳、だめぇ…… 」

 耳元で囁くと、擽ったそうに身をよがらせる。あまりの可愛さに理性が保てず、一気に奥まで指を入れてしまい、有彩さんはすぐに絶頂してしまった。

「もう、いきなりは酷いよ 」

「可愛かったですよ 」

「なによ、さっきから可愛い可愛いって。そんなの、好きな人に言ってもらいなさいよ 」

 からかわれたと思ったのか、そっぽを向いて不機嫌になる有彩さん。こういう所があるから、可愛いんだけど、本人に言ったらもっと機嫌を損ねそうだから黙っておく。

「じゃあ、有彩さんが私に言ってくださいよ 」

 でも、せめてこの位は言わせて欲しい。

「どういう事よ? 」

 まだ、有彩さんは分かっていないみたいだけど。

「有彩さんが言ったんじゃないですか。好きな人に言ってもらえって 」

 伝えなければ、伝わならないみたいだから。

「大好きです、有彩さん。セフレとしてじゃなくて、一人の女性として 」

 恥ずかしいけど、さっき恥ずかしがる顔を見せてもらったからおあいこってことで。

「……驚いた。まさか、本人に恋愛相談してたなんて、貴女正気なの? 」

「だって、相談できる人が有彩さんしかいなかったんですもん 」

 少し呆れたように、頭を抑える。あれ、もしかしてこれって失敗……

 頭の中が不安でいっぱいになる。でも、そんな不安は杞憂だったみたいだ。

「……有彩さん、耳真っ赤ですよ 」

「なっ……! 」

 さらに顔全体まで真っ赤になった。こんなの、笑うなという方が無理である。私が軽く笑うと、釣られて有彩さんも笑いだした。

「私、今日有彩さんの恥ずかしがる顔沢山見ちゃいました〜 」

「これから貴女の恥ずかしがる顔を沢山見るからいいわよ 」

 まずは手を絡ませる。徐々に顔を近づけ、目を瞑る。唇を合わせて、快楽に身を委ねる。これが、恋人になった私達の初めてのキス。

 ファーストキスはレモンの味というのは、本当だったようだ。

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セフレと恋がしたい ソア @yukimurasoar

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