第2話



今日の電車も満員電車。

どの人を見てもスマホをいじっててうつ向いている。


その流れに沿って、私も手にスマホを取り出していじってしまう。


『号外!○○議員の…。』

『学生必見!各教科の…。』

くだらないスレッドが私の目に映る。


「変なの。」


また言葉とともに出てくる言霊。

だけど変な言霊。だって透明で何にも書かれていない。

これは…。無意識の言霊…か。



『次は~大宮~大宮駅でございます~。』



野太い男性のアナウンスが車内に響く。

そして駅につくと右側の扉が開いて聞き覚えの声が耳にはいる。


そう。学校一のギャル女たちだ。


「あー、マジでだるーい。」

「それなーwマジでありえなーい。」


無責任に放たれる言葉。そして真っ黒な言霊たち。

私は見ていられなくて、目をそっと閉じた。

目を閉じたら周りの音も聞こえなくなったようだ。

少しだけこの状態で過ごしていたい。

そう思えた。



学校につくともうほとんどの人が席についていた。

私はみんなに見られまいと俯きながら自席へと向かう。


何分経ったのだろうか。

教室の扉が勢いよく開き、担任が入ってくる。

「おはよう。」

気の抜けた声と怠いと言わんばかりの言霊が出てきた。

今日はまだ月曜日なのに担任は今週を乗り越えれるのか…。

少々心配だ。


何を喋っていたのか。覚えていない。

ただ、チャイムが鳴り担任が「一時間目は社会科だぞー。」と言ったのは覚えていた。社会…。別に好きでもないし嫌いでもない。ただ少し憂鬱にはなる。


「早苗。これ答えれるかー?」


黒板には資本主義と社会主義についての違い。と書かれていた。

ため息をつく。


「社会主義は個人や企業にではなく、国や地方公共団体・協同組合などに生産手段を公有させること。資本主義は自由競争により利益を追求して経済活動を行えば、社会全体の利益も増大していくという考え方です。」


今思えばなぜあんなに淡々と答えられたのだろうか。

憂鬱でしかない授業なのになぜ…。


「うっわー。流石天才様は違うわーw」

「いいねーw」


後方から聞こえる嫌な声…。

少し廃れた言霊がうようよと漂う。

ああ。嫌だ。


学校が終わればまた電車に乗って家に帰る。


だけど今日は一直線には帰りたくなかった。

何故かは自分でもわからない。

どこか心の中にできた隙間を埋めたくて。寄り道したんだろう。


「いらっしゃいませー。」


店員は私を見て笑顔でそう言った。





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壁を越えて出会ったあの子は不思議だった 機械仕掛けのお月様 @15thnight

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