第6話

 車外へ出てリュウへ事情を伝える。

「『最初から2人で良いようにしようとしてたのか?』とか言い出してるから宥めてくる。車ちょっと出すな」

「大丈夫かよ…?」

「ここはオレに任せろ」

「おぉ…、マジで頼むな…」

 何かあっても誰かがどうにかしてくれるくらいにしか思っていない。その割にそれっぽく振る舞うリュウに冷めながら振り返りもせずに車を出した。


 広い敷地には屋内外あらゆる競技が同時に試合を開始出来る環境が備わっており、駐車場や公衆トイレもそれぞれに完備されている。

 車の入り具合いを探りながら、無難そうな駐車場を見繕い停車した。後から入ってくる車はどうでもいい。

車だとはいえ麻由も僕も上半身裸の状態で移動している光景は間抜けな感じはしたが、停車して後部座席に移動した拍子には両掌を麻由の両乳房に添えていた。やはり2人きりだと露骨に嫌がられることもない。


 小さくて有名なリュウのアレを咥えた口との接吻は避けながらも、きっとリュウも無邪気に吸い付いたであろう、麻由のその綺麗な水風船の先端の様なコントラストの乳頭へ堪らず舌を這わせてしまっていた。

濃いインディゴの綺麗目なデニムの上から下腹部に触れると、しっとりと熱を持っているのが感じられ、デニムのジップを下ろして足首まで摺下げた。

 僕も「やっぱりこれくらいのサイズは欲しいだろう?」と言わんばかりに、リュウの粗チンよりはいくらか太くて長めのアレを麻由の鼻先に突き出した。


 先ずは先端をクチで覆うのだと思いきや、片キンをパックリと口に含んだその拍子の衝撃に思わず情けない声が漏れそうになる。

 大人しそうな麻由の意外なテクニックに、このままでは麻由を貫く前に自分が果ててしまうことを危惧した僕は、麻由を押し倒し下着の脇から正常位でアレを突っ込んだ。


 唇を噛んで堪えながら許しを乞うような視線を返す表情が良い。

「そんなに突いちゃダメ」と首を横に振る麻由は攻守共に柔軟に応じられるようだ。

 まずは麻由を絶頂に導こうと、右手の親指でアレ先端の突起を転がしながら激しく突くと、麻由が呼吸を乱しながら2度ほど大きく跳ねた。

 「もう一度クチでしてくれ」と車内に差し込む街灯の灯りを照り返すアレを麻由の顔の前へ再び突き出す。

 その独特な愛撫は、言うなれば亀頭とタマキンを3つの玉蒟蒻の如くパクつくアプローチで、竿を咥えてアタマを上下させる一般的なソレではなかった。


 圧倒されながらもついつい問いかけてしまう。

「誰かに教わったの?」

「前の彼にヘタクソって言われたので色々勉強しました(笑)」

「こんな攻め手が多彩なのは初めてだから変な声出そう…(笑)」

「出して良いですよ(笑)」

 そう言うと漸く先からアレを咥えて自らの喉を突くかのようにアタマを前後しながら根元を手で扱き始めた。アタマと手の上下運動も絶妙な調和が取れており天性のモノが窺える。


 もはや余計な意地など見せない方が良いと堪忍した僕は、カエルがひっくり返った様な格好で情けない声を発しながら麻由のクチの中で思い切り果てた。

「まだイケます?(笑)」の麻由の問いに恐怖を覚えながら、「その美乳をもっと見せてくれ」と話題を逸らし、携帯電話でどさくさ紛れに写真を撮った。

「顔写って無いですよね?」

「もちろん」

「それなら別に良いです(笑) さっきのヒトに見せないでくださいね」


 服を着直してからリュウを降ろした場所へ戻るとそこにヒトの姿が見当たらなかったので電話入れた。

「今何処?」

「N海岸!もう皆合流してる」

「今から送ってから向かう」

 麻由を自宅付近まで送り「内緒にしておくから、また会おう」と連絡先を交換してN海岸へ向けて車を出した。


 N海岸へ辿り着くと、ビーチ手前の広い駐車場に見慣れた車が雑に並んでいた。

 車を降り、控えめに照らされたヘッドライトの先へ向かうと、男女合わせた10数人が不揃いながら円陣を組むように腰を下ろしていたが、僕が戻って来たことに気付いて程なくして、思い思いに車に乗り込みその場を後にした。


 弟のリョウが同じ車に乗り合わせ問いかける。

「SEXした?」

「なんとか。クチが上手すぎて昇天した」

「リュウ君が電話で『2人で消えやがった』って不満気だったから迎えに行く羽目になった」

「先に譲ったのをいつもみたくダラダラとヤってるので外から覗いてたら、バレて大泣きされたので宥めてたんだよ」

「そこからよくやるよね…」

「相手も乳丸出しだったし、『オレも脱いだらフェアじゃん』って脱いだら和んでそうなった」

「意味が分からない」

 案の定僕の前とモノ言いが違うリュウにがっかりしながらも、ドライな自分と薄情なリュウとの距離感としてはこれくらいがイーブンな気がした。


「他はどうだった?」

「皆ダメ。犬連れてたコ達いたじゃん?何しようとしても犬が吠えたり、『犬だけ車内に残せない…』って感じで直ぐ解散したって(笑)」

「ヒトがせっかく相手見つけたのに犬のせいにするなって言っとけ!」

「…(笑)」





-

 その年の秋口。

 上京して就職するまでの在学中に唯一やり残していた国家資格の対策に励む日々を送っていた。

 その月の中旬に秋季試験の受験を予定しており、ここでキッチリ合格出来れば一通り就職前に出来ることはやったことになる。

 遊ぶ時のハメ外しとバランスを取るように、ここ数年は真面目に取り組むことには向き合えるようになったし、高校を中退した後の心細い境遇から、何とか自分のフィールドへ舞い戻って来れたような手応えもそれとなく感じていた。

 皆何事にも必死で取り組みながら、それぞれに背負った運命を生き抜いている、何となく周囲のオトナを見ながら感じ始めていた。

 最近は朝帰りする時に早朝から出社しようと家を出て行く父親と玄関先ですれ違う度に色々考えさせられもしていた。後ろ姿も一段と大きく見える。

 仕事に家事育児、教育と、親が自分達にしてくれたことは、将来結婚して子供に恵まれたあかつきには、後世へ繋ぐカタチで恩返しとしたい。


 ある夜の夕食後。

 何人かの女性にメールを送っておいて試験の過去問をひたすら解いていると気付けば夜が更けていた。問題を解き進めることに没頭していると時間の経過が早い。過去問を繰り返し解いていると、何を答えさせたいかなどは形式的に読めてくる。ここまで来れば今回はパス出来るだろう。


 一息ついてメールの返信をチェックしていると麻由からリアクションがあったのでコールを入れた。

「もう寝る?」

「まだ寝ないかな」

「ちょっと行くから出て来てよ」

「明日早いしなぁ…」

「大丈夫。直ぐ帰るから(笑)」

 麻由とは5月の車でのプレイ以降、連絡を取りはするものの1度も会えておらず、就職するまでにまた1度はスーパープレイに翻弄されたい想いは絶えなかった。


 以前送り届けた麻由の自宅付近で落ち合い、近くの大学の入り口脇に車を停めて、早速シートを倒してフラットな状態にした。

「いきなり?(笑)」

「やっぱり?」

「『最近どうしてる〜?』とかもっとあるでしょ〜(笑)」

「最近ずっと試験勉強ばかりしてるなぁ〜」

「勉強?勉強なんて出来るの?(笑)」

「出来るわ!周りのバカよりはだけど。取っときたい国家資格があって」

「へ〜。偉いじゃん」

「だから全然息抜きしてないのでおっぱい見せてください!(笑)」

「彼女作れば?」

「春から都内だし。それまでに数ヶ月海外行ってる予定だから」

「海外?卒業旅行?」

「インターンで現地の日本企業で働かせてもらうことになってる」

「そんなこと出来るの?ってか何者?」

「ただのヤリチン(笑)」

「彼女作れば良いのに…」


 麻由は「付き合っていさえすれば何でもしてあげられるのに」とでも言い出しそうに、僕云々よりも自分がそろそろ彼でも作って落ち着きたいのだと喋り始めた。

 僕にとってはその代償はもはや2度目を待ち望んだスーパープレイどころではない。

 地元で過ごす時間が数ヶ月も残されていない状況で中途半端な関係の相手と交際して時間の制約や行動の制限がかかることは望まない。

 だがエロ情事を期待して駆け付けたからには「おっぱいぐらいは吸いたい!」と麻由の上着の裾を捲し上げて何も聞こえないフリをしておもむろに両方の乳房に吸い付いていた。

「何でブラじゃなくて水着?」

「うるさい。何も聞かないで!」

「泳ぐの?」

「うるさい…」


 どういう意図があったのかは分からないが、僕は麻由の自分自身に対する言い訳を与えてやれなかったようだ。

 その後も何度も「彼女作れば良いのに」と繰り返す麻由相手に、「もう遅いからおやすみ」と適当な理由を添えて自宅前へ送りつけ、帰宅して麻由の美乳の余韻に浸りながら強く拳を握りしめるように利き手でアレを掴んだ。

 無様な格好でボケっとしている自分は滑稽だろう。それが明け方に近い時間である程そう感じる。

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扉の向こうのアチラ 城西腐 @josephhvision

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