第26話 side ???


 「クソがァッ!!」


 ガゴンッ、と音を立て腹いせに蹴られて転がっていく。


 場所は郊外にある取り壊しがされずに残り続ける廃工場。そこには、いかにも不良ですという奴らがたむろしていた。


 キレ散らかしている男に、周囲の人たちはやれやれといった感じに見ている。


 「落ち着けよ、何だ生理か?」

 「うるせェ!」


 しょうもない戯れ言をなげて会話に持ち込もうとしても、激昂している相手には意味がない。落ち着くまで待つことでようやく話し合いに持ち込める。


 暴れていた人物が息を荒げ、誰かが持ち込んだソファに座る。


 あーあ、こんなやつくたばんねーかなぁ。


 そんな風に思いながら、ゆっくりと歩を進め廃工場の入口へと向かう。


 使いたくない手ではある。もし、最悪な事態になれば取り返しがつかなくなるかもしれない。


 バレたらバレたで、これまでの友情も何もかもを失ってしまうだろう。


 少しだけ震える手を握り、その震えを止める。


 最初の勝負どころはここなのだ。始めるための前提条件の重要ポイント。


 大事な人のためなら、この身など壊されて構わない。


 口上は決まっている。あの姿をみる限り単純な奴なのは明白。


 「――こんばんわ、ゴミクズ諸君。いい話を持ってきたんだけど聞いてくれるかい?」


 さあ―――勝負の始まりだ。


 

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美少女のお誘いより優先すべきものがあるのか? @chino117

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