忘れられない記憶の中で
芥庭 深乱
第1話 消えた電球
いつからかあなたの家の電気は
付かなくなった。
電球が切れてしまったのだろう。
朝も昼も、もちろん夜も。
その誰もいない部屋を照らしていた電球は、人々の記憶のように消えてしまった。
裏の窓を開けると思い出す。
いつも笑っていたあなたのこと。
ずっと笑って元気で、
それで持って優しくて。
そんなあなたは消えてしまった。
…すきだったわけではない。
相手は大人だ。
でも、心の支えであった。
重たい荷物を抱えて帰る私に
笑顔で
「お帰り」といってくれたあなたを見て、
いつもホッとしていた。
「今日も平穏だ」
そう思うことができた。
あなたの笑顔はみんなの心の太陽だった
でも、
唐突にそれは訪れた
『死』だ
誰もそれに抗うことはできない
そして誰も気づかない
あなたは誰かに看取られるわけでもなく
その朱く燃える魂は
ひっそりと消えていった
私がそれを知ったのは
簡単な文面
なんてこの世は残酷なんだろう
なんて神様は酷いのだろう
彼には家族もいたのに
これから養っていかなければならない
家族があったのに
裏の窓を開けるたびに思い出す
この世の残酷さを
そして
人々は何もなかったかのように
生きているということに
忘れられない記憶の中で 芥庭 深乱 @akutabamiran
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