第24話・ゲットレディ! (最終)
わたしと大石先輩の勝負に次のゲーム
そして文化祭当日。
「どうしてこうなった……?」
わたしは午前中に文芸部の部誌販売の担当を終え、家庭科部の出店であるやきそば屋の
周囲には漫研やアニメ研究会やコスプレ研究会が、カメラやスマホを構えて包囲陣を
わたしが着用してるのは、お腹が目立たない仕様の新型メイド服で、フリルつきネコミミカチューシャとネコシッポが装備されていました。
ちなみに大石先輩と理央さん(ネコミミネコシッポ装備)は、旧タイプのミニスカメイド服を着ています。
「ありがたや~」「尊い……」「もう結婚したらいいんじゃね?」
わたしはメイド姿の大石先輩に
「
「せせせせ先輩やめてくださいみんな見てます撮影してます」
「見せてあげればいいじゃないですか。ほらほらナデナデしちゃいますよ~」
「うにゃっ⁉ そこダメですアゴはやばいはわわんごろごろにゃ~ん♡」
この人ネコたらしですマッサージ
「先輩がた、もうすぐ大会が始まりますので、そろそろ準備をお願いします」
助け舟が入りました!
「
やだこれぜんぜん耐えられないっ!
「小路ちゃんも、こっちにいらっしゃいな。桃源郷をお見せしますよ」
「結構です。お役目がありますので」
先輩のお誘いを、あっさり断る新型イギリス式ロンスカメイド(ネコ装備なし)姿の小路ちゃん。
「先輩がたを回収したら、華道部に戻らないといけません」
「メイド服で華道するんですにゃん?」
思わず語尾がネコ語になってしまいました。
「どのような状況下でも、どんな服装でも、お花を忘れないのが華道部のモットーですから」
スパルタですね華道部。
「そうですか……仕方ありませんね。では参りましょうか」
「わひゃあっ⁉」
わたしの脇の下を
この人意外と力持ちです!
「マネージャーとはいえ、元プロレス研を
「その細腕のどこにそんなパワー秘めてるんですか⁉」
「細くはありませんよ。
「サイドチェストで服がパーンと
「嫌ですね、それじゃ半身しか破けませんよ?」
「モスト・マスキュラーなら全身イケるんですか先輩⁉」
「それは
いやそれ現実にやったら、いくら彼氏さんでもドン引きするのでは?
「撮影会はこれで終わりでーす!」
「ええ~っ⁉」「もう終わり?」「他に誰かいないの?」
「うちのレイヤーが全員出払ってるんですよぉ」
家庭科部長さん(制服エプロン)の閉会宣言に、ギャラリーは不満顔。
そこでわたしは、ちょっとした復讐を
「まだいますよ! ほら、そこにまだメイドさんが!」
「チッ、しまった!」
先輩に持ち上げられたまま指差す先には、ミニスカネコミミネコシッポメイド服着用の理央さんが。
「だが遅い! さらばだ明智く……のわっ⁉」
足元に潜伏していた家庭科部員さんたちに、たちまち捕縛される理央さん。
「離せ! 俺は大人だぞ! 誰がなんと言おうと私は……」
そのまま撮影会続行かと思われましたが、校舎内に
きっとなにか他のコスプレをさせられるのでしょう。
確か家庭科室にバニーメイド服があったはず。
「ご
他人の心配をしてる場合じゃないんですけどね。
「結構
生徒会長の真緒
文化祭のありきたりな出店に
子供の頃、夢中になったゲームを求めるお父さんたちが。
若き日のゲーセン通いを
獲物を奪い合うハイエナのごとく、筐体に喰らいついていました。
電子研の活躍で、室内のテーブル筐体とミディタイプ筐体は、なんと合計20台。
さらには壁際にはPCが並び、パソコン部自慢の歴代同人ゲームが絶賛プレイ中です。
『ちょっと試して行かんかね?』
エレメカのジャンケンゲームまでありました。
「まさか老師が客引きしてるところを見られるなんて……」
大石先輩も感動の涙が止まりません。
わたしは老師に次々と瞬殺されるお客さんたちに笑いが止まりません。
「どうやら照明を工夫したようですね」
きっとパソコン部のゲーセン店員経験者がノウハウの限りを尽くしたのでしょう。
これならテーブル筐体でもダンボールを
「先輩ちょっとあれ見てください! 3Dロボゲーありますよ対戦システムは最高なのにキャラ差と公式無敵バグがメチャクチャなやつ!」
2本のスティック操作に中年のおじさんが四苦八苦してました。
対決街な2in1筐体が持つ本来の安物ヘボタレスティックは、家庭用移植版の専用コントローラーから流用された、使いやすい灰色とオレンジボタンのスティックに交換されているものの、それでも操作の習得には数週間から数か月を要します。
ネットに
「私あれ、パッドでしかやった事ないんですよね」
「わたしもです。あとで一緒にやりましょう! 先輩はどの機体がお好みですか?」
「緑色の頭でっかちさんです」
「うわぁ
キャラ差的に、わたしの完全勝利は間違いなしでしょう。
「それは撃墜し
先輩はガチどころか修羅の人でした。
「……
それって
これは一方的に焼かれて終わるかもしれませんね。
いえいえスティック未経験者なら、望みはきっとどこかに少しはあるはず……わたしも未経験ですけど。
「繭美、出番だ! 先輩もスタンバイ頼みます!」
と、そこにお兄のご指名が入りました。
「では行きましょうか」
「そうですね」
大石先輩との勝負は、隣の生徒会会議室(元・第1視聴覚室)で行われます。
ゲームは戦乙女さんと漢字の【山】みたいな頭で全身緑色のポッチャリさんが魔物と戦う80年代終盤のアクションゲームで、2人協力プレイが可能なレジェンドっぽい名作。
先輩の得意な全方向アクションゲームと、わたしが得意なシューティングゲームの要素を両方取り込んだ作品で、
筐体を選んでレストアしたのは電子研部長さんで、極めてベストな選択と言えるでしょう。
ちなみに先輩が戦乙女さんで、わたしが緑色の人を使う予定。
2人とも移植版を徹底的にやり込み、我が家のお店でやった練習では、どうにかノーミスクリアできたので、今回はハイスコアに挑戦します。
「今日は
月面宙返りやファイヤーなコマはできませんが、わたしたちにはゲーマー魂があります。
「フォーメーションが鍵ですね」
第2視聴覚室のドアから直接生徒会会議室に入ると、すでに待機していたギャラリーの歓声が
大半は前世持ちの魔王軍幹部さんや人類勢のみなさんですが、生徒やそのご家族など、一般のお客さんも多数混ざっている模様。
『それではゲーム大会を開催……プレイヤーネームはどうしますか?』
司会担当のパソコン研究部長さんが、わたしたちにマイクを向けました。
『そうですね……では
『私は
『それでは席について……』
観客席には
小路ちゃんは華道部のお仕事で来れませんでしたが、きっとあとでネット動画を観てくれるに違いありません。
もちろん大石先輩の彼氏さんこと大岩先輩も、奇声を張り上げて応援してくれています。
部屋の
そして隣には、人生最大のライバルにして相棒、大石先輩が。
前世からのご縁が生んだ、奇跡のレトロゲーム大会。
きっと今日という日を、わたしは一生忘れないでしょう。
『ゲーム開始! 百円玉を投入してください!』
フリープレイに設定してもよかったのですが、わたしたちは儀式の
ミディタイプ筐体に
室内は生徒会執行部のカメラで撮影され、ゲーム画面と一緒にネットで生配信されるので、どこかに隠れているバニーメイド姿の理央さんも、さすがにローアングルからの盗撮はできないでしょう。
そして2人同時にスタートボタンを……。
「ゲットレディ!」
「ゲットレディ!」
ゲーム、スタート!
(おわり)
勇者ハイティーン 島風あさみ @asami9223
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