第2話居ていい場所

「ごめんなさい待ったからしら?」

「いや、そんなだな」

同じクラスなので終わる時間は同じなのだが、城崎は先生に呼び出されて職員室に行ったため待つ必要があった。

「そう…では、行きましょうか」

「おう」

やたら周りがザワザワしてるな、そういえばこいつは城崎の城と美しい容姿から「姫」と、呼ばれてるのを聞いたことがある。

そうか、苦痛に繋がる出来事なんて数えきれないほどある。歩いてるだけでこれだもんな

「安い同情はいらない」そうは言っていたがこりゃ少し、同情するぞ。こいつとならもしかしたら気が合うかもしれないな。

「ついたわ」

あれこれ考えているうちにどうやら目的地についたらしい。使われない教室。その扉に紙が貼ってある。

「生き甲斐を見つけよう同好会?」

なんだ、このふざけた名前はネーミングセンスが皆無なんだが…

「そう。これは私が作った同好会。私は死にたいと思っているけれど、このまま死ぬのも何か悔しいのだから、この死にたいと気持ちをなくすために生き甲斐を見つけようと思って。私が作ったわ。」

なるほどな、確かにいい案かもな。

「わりぃ帰るわ」

お前にとってはな。

俺は死んだときになるべく他人に迷惑をかけたくない。自殺というだけで迷惑極まりないのに、さらに他人に迷惑をかけるなんてあってはならない。それなのに、いかにも人に関わりそうな部活に入ったら死んだあとにその人に迷惑がかかることになるかもしれない。いや、そんなことより恥ずかしいだろ。こんな異次元な名前の同好会なんて!

「ねぇ?花宮くん…どっちに主導権があるかわかってるの?」

いや、そんなたいしたことじゃないだろあれ

、なんならこれ作ってたってことはあそこで死ぬ気無かったじゃん、じゃあここまであの一瞬で考えたってことか?凄いな。

思わず感心してしまったよ。

「なぁ、この借りは帰りに何か奢ってやるからそれでよくないか?」

少し適当だがこれが妥当だろう。

「なに帰りに友達とコンビニによってアイス食べるみたいな青春特有の寄り道ルートに行こうとしてるのよ」

「何を言ってるんだお前は」

「ごめんなさい取り乱したわ。じゃあ選びなさい。私と今死ぬか、この同好会に入るか」

どっちも嫌なんだが、でもこれ以上長引かせるのも面倒だしな。

「わかった。この同好会に入ろう」

俺は渋々同好会に入ることを決意した。

よくもまぁこんな同好会が成立したもんだな。

「助かるわ。生徒が自主的に同好会や部活を成立させるためには先生の許可と最低限二人が必要なのよね」

「なるほどな。お前が一声かければ何十人でも入ってきそうだかな。でも、丁度良かった。俺は今生き甲斐を一つ見つけたぞ」

「ならそれを達成させなければならないわね、良ければ聞いてもいいかしら?」

見つけるだけじゃ駄目なのかよ。何か詐欺にあった感覚だ。

「構わない、生き甲斐はだな…お前に借りを作って早くこの同好会から抜けることだ」

「ふ、ふふふふふふ」

城崎は少し肩を震わせたあと、美しい笑顔で言った。

「貴方、今のはなかなか面白いわよ」

な、なるほどなそれは、姫姫言われるわけだ。

城崎が扉を開けて中に入り俺も続いてなかに入る。

「お前さてはモテるだろ?」

「まさかそんな小癪な手で借りを作ろうとか思ってるのかしら?花宮君、バカが漏れてるわよ、あとお前と呼ばれるのはなんだが不快だわせめて名字にして貰えるかしら?」

城崎は毒舌気味に言ってくる。これが本来の城崎自身なのだろうか?

「いや、今のは城崎…あれだよ…あれ会話術として、掴みをだな」

「あれが掴み?小学生でももっとマトモな話題を振れるわよ。」

「すまん、勉強してきます。」

「ええ、頑張って。応援してるわ」

昔から居場所がなくて初めて見つけた居場所。しかし、屋上は俺の居場所ではなくなった。でも…




『あいつ…またケンカしたらしいぜ。しかも全員病院送りだってよ!怖いし避けよ避けよ』

『ずーっと暗い顔で座ってるよね、あいつ気持ち悪いなー』

『あ、あの子よあの子!居るだけで悪影響よねぇ全くうちの子が心配だわ』

でも……ここは、俺の居ていい場所なのかもしれない。






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俺に生き甲斐という概念は何処を探してもない。 六呂 句尾 @Haru-Eto

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