俺に生き甲斐という概念は何処を探してもない。
六呂 句尾
第1話そこ、俺の自殺スポットなんだが、
友達がいない俺にとって大事なのは居場所だと思う。孤独を自分の居場所を作ることにより緩和させることができるからだ。俺の居場所…そう屋上である。四限目の授業が終わると同時に登校途中に買った昼食を手に持ち屋上に上がる。そこで食べる飯ほどうまいものはないのだが、どうやら今日は先客がいた。
城崎美紀、この高校一の美少女と呼ばれる生徒で勉強もできてスポーツもできる完璧超人らしい。そんなやつこの世にいるんだなぁと感心したが、どうやらその城崎は自殺するつもりなのか屋上を囲むフェンスの外にいる。
おいおい、こんなステータスで産まれることなんて一万回試して一回出るかどうか位だろ。何故そんな生徒がそこにいるんだ…いや、そんな事は関係ない。
「おい、今すぐこっちに戻れ」
俺の声に反応して城崎が顔を少しだけこちらに向けた。確かに整った顔立ちだ。テレビで美人だ百年に一度だとかもてはやされてる人にひけをとらない。美しさで判断するならそれを凌駕する程までに整った顔立ちだ。
「私が何故こっちにいるのか考えればわかるわよね?安い同情や、偽善はやめてくれるかしら」
「何言ってんだ、そこはなぁ……俺の自殺スポットなんだよ!」
城崎は少し考えた様子を見せて、すぐに口を開いた。
「それが何か私に関係あるのかしら?」
「お前が死んだところで俺も死んだら恋人の後を追って死んだみたいなバットエンドドラマになっちまうだろ」
テレビは昔無駄に見ていたので女子高生ならドラマを沢山みるだろう、とかいうど偏見を込めて場を濁した。
「ごめんなさい、全く意味がわからないわ」
やはり、偏見らしい。
城崎は呆れた様子で続けた。
「はぁとても死ねる気分ではなくなったわ、とりあえずそっちに行くので、後ろを向いていてもらえる?」
「わかった」
ストンと、音がして城崎に声をかけられる。
「もういいわ、ありがとう」
そう声をかけられて俺は腰を下ろし飯を食べる準備をし始めた。
「あなたバットエンドがどうたら言っていたけれど、死んだあとなら関係ないわ。どう?私と心中してみる?」
城崎は少し口角を上げて俺に話しかけてきた。いい話なのかわからないが答えは勿論ノーだ。
「悪いが、お前と心中する気なんか起きないし、死にたいのはやまやまだが、まだ死ぬわけにはいかないんだ」
「そう…残念ね」
城崎はいささか興味無さそうに俺の返答に相づちを打った。
「私は、いつでも準備はできてるのだけれど貴方の下らない私情で、死ぬという行為を邪魔されたわ」
威圧的に城崎は俺に言った。
俺は食べているパンをごくりとのみこんだ。
「あ、ああそれに関してはすまないかった」
「そうよねこれに関しては貴方に非があるわだから放課後少し時間をくれないかしら?花宮玲さん」
「わかった」
俺の名前を知ってるのか…そうか同じクラスだったな。
俺の居場所はどうやら俺だけの居場所ではなくなったらしい。
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