第27話 KSG首領が全てに決着をつける

<KSGは解散する>

 俺はその一言を、全てのメンバーに向けて一斉送信した。

 たちまちのうちに、チャットは非難で埋め尽くされる。

<どういうつもりだ!>

<責任取れ!>

<訴えるぞ!>

 声こそ聞こえないが、やかましいことおびただしい。

 日本のネット民には正直、もう、うんざりだった。

 双眼鏡の向こうでしっかり抱き合う2人も、最初から放っておけばよかったのだ。

 だが、それを引き裂いてしまったという点では俺も同罪だ。

<勝手にするといい>

 そう言い捨ててチャットから離れると、スマホ1枚の操作でメンバー全員、さっさとアクセス禁止にする。

 これで、あの恋する2人は自由になった。

 KGSのせいでゴタゴタに巻き込んでしまったことへの、せめてもの罪滅ぼしだ。

 その勢いで、俺が更に取り掛かったことがある。

 10代の頃、「。」なんてふざけた名前で中途半端に書いた小説を仕上げることだ。

 オチはもう、決まっている。

 今日やったことを、そのまま小説にすればいい。

 少年が最後の怪物に組みつくと、食われたはずの美少女の声が耳元で囁くのだ。

「安心して、私も着ぐるみだから」

 それはまさに、俺がカッコつけてフランス語で付けた題名通りだ。

 「巧妙に仕掛けられた、少年への罠」。

 全ては無気力な少年に、やる気を出させるための大掛かりな芝居だったのだ。

 あの小説投稿サイトを久々に開いた俺は、結びのセリフを大げさな節をつけてつぶやいてみた。

「これにて、打ち止め……」 

 嫉妬深いネットの亡者どもの恐怖も、十数年前に忘れていた夢も。

 SNSと共に始まったことは、全て!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ようこそ、KSG(孤立主義者限定)サービスへ! 兵藤晴佳 @hyoudo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ