亡霊探偵アカリ

神城 希弥

第1話 易簀

―――まだ私は死ねない。死ぬわけには…いかない。



彼女はそう呟き、必死に生き延びようとしていた。

だが彼女は、『私はもう無理だ』と悟っていた。それでも生きたかった。まだすべき事が果たせてないからだ。


「つ、津城さん!大丈夫ですか!?」


彼は走って、這っている私の所に来た。彼女は安心したのか、体から力がスッと抜けていった。


「ダメ…みた…い。ちょっと…バカしちゃっ…た。ふふ」


彼女は弱々しい口調で呟いた。


「ねぇ…優夢ひろむ…くん。お願いが…あるの」


彼女の震える手が彼の顔に伸びる。


「私がまだ…解けな…かった、あの謎を…君が…」


その直後、伸ばしていた彼女の手がぱたりと落ちる。それっきり彼女は動かなかった。

しかし、生きたがってた彼女の最後の顔は、悲しみよりも喜びの感情が強いように見えた。



―――よかった。優夢くんに見守られながら死ねた。これって独りで死んだ訳じゃないんだよね?



彼女は、小さく笑みを浮かべていた。

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亡霊探偵アカリ 神城 希弥 @kohasame

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