おかんはおかんをおかんで‥‥

紫 李鳥

おかんはおかんをおかんで‥‥

 



【鬼の霍乱かくらん



 おかんが風邪引いた。


 いっぺんも病気したことない健康優良オバンのおかんが、寝込んでもうた。


 これ幸いと、おかんの代わりに近所のおばはんと喋りまくる私。


「おかん、風邪引いてもうてな。アッハッハ。なんや、おかんが元気ないと、寂しいてあかんわ。早よ風邪治して、いつもの元気なおかんに戻ってほしいわ、ほんま。アッハッハ……」


「オッホッホ……ほんまやな。おかあはんの笑い声が聞けんと、なんや寂しいなぁ」





【口は重宝ちょうほう



「……おかん、おかゆができたで。チッとでも食べんと、風邪治らへんで。早よう、元気なおかんに戻ってや。具合はどないや?」


「……ぅぅぅ」


(クッ。静かなわが家や。この間に羽根を伸ばすか)





【鬼の居ぬ間に洗濯】



 居間にて、おとんと弟と三人で家族だんらん。


「ワッハッハ……。なんや知らんけど楽しいな。な? 姉貴」


「ほんまやな。久しぶりにおとんの笑う顔見るで」


「そうか? なんや、一人おらんだけで、こんなに楽しいもんかいな。お前が作ったまずい飯もうまく感じるわ。ガッハッハ」


「俺もおとんと同感や。ワッハッハ」


「二人とも、ひとこと余計や。アッハッハ」





【百薬の長】



 翌朝。


「ウッヒッヒ。寝酒したら一発で治ったやんか。やっぱ、酒は百薬の長やで。ほんま。ほな、早速、井戸端会議に行ってくるで。ゲヘ」


 一変して、元気ありすぎのおかん。


 呆気に取られた顔で目を合わせる、おとんと弟と私。




【おかんは悪寒をお燗で】治して、あっという間に、元のおかんに戻ってもうた。


 静かなわが家は、一夜にして幻と化した。





【泣きっ面に蜂】



「ヒィ~ックション!」


 あげく、おかんに風邪移された。


 おかんのパワーには誰も勝てへん。






 風邪さえも。

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