「凍てつく風よどうかどうか止んで⑨」
GM:ーー5ラウンド裏ーー
GM:海竜は蘇生したと言えど、すでに瀕死には変わらない。残ったマナで今度こそ殲滅せんともう一度<ディメンジョンソード>を行使する。回避に成功したのはミーアのみ。再び甚大なダメージを受ける。
ミーア:「……!? アブナッ!!」
トリア:「あはは、流石に正面から受けてカウンターで殴る。それは真似できないか。」
GM:シュトラウトはそのまま士気の柱であるトリアを仕留めにかかる。多数の部位から発せられる渾身の攻撃はトリアのHPは0を下回る。が、トリアは<不屈>を発動し倒れない!まだ、ここで倒れるわけにはいかない…!
トリア:「まだまだだよ!!!」
GM:ーー6ラウンド表ーー
GM:アンナ、ミーア、ジャック、トリアが渾身の攻撃を炸裂させる。雷光一閃、神の右拳、収束火球、無双の斧!!
ミーア:「もういっかいっっ!!」
アンナ:「お導きは我らに在ります!!」
トリア:「私には仲間がいる。ジャック!」
ジャック:「さぁ、今度こそ止めといこう。」
GM:まだだ、コアをつぶしてもまだ動く。戦闘はまだ終わらない。残り30点で蘇生!!
ジャック:「シーリス!」
トリア:「おねがい!」
シーリス:「任せて!」
GM:シーリスはもう1ラウンド、もう10秒だけ戦うための時間を稼ぐ。いや、稼ぎ出さねばならないのだから。この冬を終わらせるために!!
GM:ーー6ラウンド裏ーー
GM:シュトラウトはすでにマナも枯渇している。ならば竜種がしてくる事は1つ。ブレスが最後のあがきと言わんばかりに吹き付けられる!!
GM:君たちは凍えそうな息吹の中、自らの心を燃やす。最後の一撃のために!!
GM:海竜は全身をくねらせ、攻撃を仕掛けてきた。依然トリアを狙い続けるが、落としきるには至らない。
トリア:「もう二度とお父さんに失わせないって決めてるの!」
GM:ーー7ラウンド表ーー
グリード:「削り切ってくれ!最後の手段を使う!!」
トリア:「でも!…わかった。でも今度また作ってね!」
ジャック:「タイミング合わせていくぞ、グリード、ユニコーン準備」
グリード:「もうやってるさ!いつでも行けるぞ!!!」
GM:ミーアは必死に海竜の生命力を削る!!
ミーア:ミーアストラーーーッシュ!!
トリア:「お父さん!」
GM:グリードは最終兵器に手を伸ばす。文字通り使えば船ごと敵を木っ端みじんにする最後の手段だ!しかし、ボタンを叩くために振り上げられたその手は、降ろされることはなかった。
グリード:「ダメだよ、こういう場面を僕にまかせちゃ。」
トリア:「あぁ、もう!折角のチャンスだったじゃん!」
グリード:「君には、ぼくなんかよりも、頼れる味方がいるだろう!!」
トリア:「知ってるよ!でも!お父さんにも決めてもらいたかった!」
ジャック:「シーリス!槍を放て!!」
ミーア:「いけえええええええ!!!!」
トリア:「つっこめえええええええ!!」
GM:炎熱の槍が、いま海竜を穿つ!!
さぁ、10年の執念に、積年の冬に、白日の下に、雹海竜シュトラウトの討伐を証明する———
グリード:「準備オーケーだ!!」
トリア:「アンナ!ジャック!行くよ!」
ジャック:「魔力を回すぞトリア!」
トリア:「せぇのっ!!」
シーリス:「みんなお願い!!」
アンナ:「はい!!」
ミーア:「翼の牽制は任せて!!」
アンナ:「光れ、怪力の腕輪ッー!!みんなを、守ってください!!!」
GM:ガコン‥‥
直後、舟艇の後部から音がする。およそ木製の船舶が出しえない高周波音。
キィイーーーーーーーーーーーンという音と共に、ノーティラスは海竜へと急発進を開始する。
破裂音と共に、前方に巨大な1本の衝角が伸びる。
それは、海竜を穿つ。もはや動かぬ胴体に、深々と突き刺さる。
しかし船は止まらない!
それでもなお進み続け、赤熱した衝角は大爆発を起こし、海竜を木っ端みじんの肉片へと変えていった。
木っ端みじんになったのは、ノーティラスも、同じだった。
勝鬨を上げろ。君たちの勝利だ!!
トリア:「じゃあね。シュトラウト。私の、私たちの旅路のいい一ページになったよ」
GM:君たちは勝利した。君たちはバラバラになった戦艇の破片に捕まりながら、冷たい海に漂っている。
GM:トリアをかかえてグリードが叫ぶ。
グリード:「ぶ、無事か、皆…!」
ミーア:「ふあ~~~疲れたあああああ!!!」何とか馬を彫像化
グリード:「奴が死んだせいで凍った海が元に戻っていく、岸まで向かうんだ…!体力を消耗する!」
GM:君たちは気づくだろう。腕輪を割って筋力が足りていないアンナは、金属鎧で泳げないことを!
シーリス:「アンナ!!」
アンナ:「…!」
トリア:「くっ」
ジャック:「アンナ!」
シーリス:全力で泳いで手を繋ぎに行きます
GM:海中では魔法も陣もかけない。詠唱は出来ない!
そんな時、岸から声がする。
喝采とともに、船を漕いでくる。
あの釣り師の男性が。多くの仲間を引き連れて向かってくるのがみえる!
釣り人:「生きているかぁーーーー!!!!もう二度と、英雄を死なせるかぁーーーーーーー!!!」
グリード:「イサラを勝手に死なせるなぁーーーー!!!!」
GM:君たちは、漁師たちによって保護された。
トリア:「お願いします!呼吸はできる状態なので!」
シーリス:「アンナ、これ……!!」筋力の腕輪
アンナ:「!…はい!!」
ジャック:「くっ…!」短い腕を水中に伸ばしてる
GM:救助作業や後始末でてんやわんやになりながら、君たちは岸へとたどり着いた。
グリード:「あー、派手にぶっ飛んだなー。出力上げ過ぎたかなぁ。」
トリア:「むぅ。今度絶対私たちの船作ってね?お父さんの操舵技術は少し覚えたんだから。」
シーリス:「……助けに来たものの、私じゃあなたを引っ張り上げるのは無理ね。」
アンナ:「いいえ、シーリスさんが来てくれなければ、そのまま窒息死してました。」
ジャック:「すまない、引き上げられなかった」
アンナ:「いいえ、ジャックさんがいなければ、マナも足りていませんでした。あの戦闘に決着がつけられたのはジャックさんのおかげです。」
シーリス:「ここは流石に私の出番だったわよ」
ジャック:「そうか……。シーリス、とっさの反応、よくやってくれた。」
ミーア:「ぷあああああ~~~!!疲れたーーーー!!!」
釣り人:「一度は逃げたんじゃが、どうしても、10年前のことがよぎってしまってな。仲間に話したら…「ばかやろー!今度こそみんなで助けるんだよ!!」ってどやされちまってな。結局、みんなで助けに来た。」
ジャック:「無事でよかった……。」
ミーア:「ほんとに!!たすかったよ~」
ジャック:「ご老体、そして他の皆もありがとう。助かったよ」
トリア:「ありがと。みんな。」
シーリス:「助かったわ。本当にありがとうございます」
トリア:「…にしても、よし。なんとかなったかな。ふふん。死ななかったよ。沈ませないって約束は守れなかったけど…。」
釣り人:「新しい漁船第一号のイカダの初出航で釣り上げるのが英雄とは思わなかったぜ。」
グリード:「なに、もうあの船は必要ないさ。」
ジャック:「随分と縁起のいい船になりそうだな」
グリード:「それより見てみなよ。」
トリア:「ん?」
ミーア:「あはは~~釣られたつられた~~」
GM:指をさす先には、厚い雪雲が晴れていくのを見届けられるだろう。この街の暗雲を晴らす明星が、君たちを象っているようだった。後始末を終える頃には、すでに夜になっていた。
トリア:「よしっ!何はともあれこれで一件落着だね!」
アンナ:「今日は、もう寝ますか?それとも、イサラさんに報告に行きますか?」
トリア:「いく。」
ミーア:「いこ!せっかくだし!ね!トリア!」
シーリス:「ええ、行きましょう」
アンナ:「ふふっ、じゃあ、行きましょうか。」
ジャック:「行くか」
トリア:「終わったら一緒に飲むって言ったしね。お父さんも行くよー!」
グリード:「あぁ、そうだな。せっかくだし硬いことは言わないさ。」
GM:-イサラの寝所-
トリア:「勝ったよ!」
GM:扉を開き、中に飛び込んだトリアは、立ち尽くすこととなった。
君たちが勝利の報告をしに母の元を訪ねた時、状況は一変していた。
イサラの胸には、深々とナイフが突き刺さり、流れる血はどす黒く。
しかし顔は微笑みを飾り、とても静かに息を引き取っていた。
ベッドの下に流れ、固まった血は、君たちにむざむざと、かつての英雄の死を見せつけるのだった。
グリード:「………………イサ、ラ。」
トリア:「…え?…なんで?嘘でしょ?おかあさん?お母さん!!!」
GM:グリードは、ただ静かに一言だけ
グリード:「…お疲れ様……。」
GM:振り返った顔は、娘が見たことのない父の顔だった。喜怒哀楽、すべてが入り混じった…。そんな、言い表しようのない表情だった。
アンナ:「そ、んな…。」
シーリス:「……っ」
トリア:「どうして!なんで!もっと話したかった!普通の親子みたいに暮らせると思ってた!あの頃の幸せが…あったはずの…!」
グリード:「トリア。…トリア!!ぼくは、知っていた。遅かれ早かれ、こうなるのを知っていた。」
トリア:「…もっと…もっと甘えたかった。」
グリード:「だから、来るなと言ったんだ。」
ジャック:「そうか……。それが……。そうだな……。イサラ・モルトの……。」
トリア:「…そっか。知ってたんだね。」
ミーア:苦虫を噛んだような顔で、くちびるを噛みながら黙とうする。
グリード:「そのナイフは、ぼくのものだ。ぼくが、ツィーリアに贈ったものだ。」
トリア:「…そっか。」
グリード:「あの子は、イサラがこんな状態で生きていることに、憤りを見せていた。」
トリア:「うん。」
グリード:「どうしてリィンカーネイションしてやらないんだ、それでも神官なのか、と。」
トリア:「うん。」
グリード:「イサラが、もう少しだけ生きたいと言ったからさ。お前たちの活躍を、もう少し聞いていたいと、そういったからだ。…ツィーリア、お前は、いったい今どこで何をしているんだ…。」
トリア:「そっか。私を、私の成長を見たかった、のかな。」
グリード:「いいか、復讐とか絶対考えちゃダメだからな。トリア!」
トリア:「お父さん。私。探すよ。探し人が変わるだけ。復讐はしない。ただ、どうしてそうしたか。理由を聞くだけ。」
グリード:「…わかった。信じるぞ。」
トリア:「うん。大丈夫。もし暴走しても。どうにかなっても。…私には、なかまがいるから。」
グリード:「…わかった。…とりあえず、一度、ディザに帰るんだ。ここにはもう用はない。ぼくも情報を集めて後で合流する。それまで、何もしちゃだめだ。いいね。」
ミーア:「そうだね。そうだよ。いままでだって、これからだって。」
グリード:「そっちの盗賊ギルドには多少顔が効く。闇夜の鷹にはコネがあるんだ。」
ジャック:「闇夜の鷹、懐かしい名だ」
トリア:「お父さんは。いなくならないでね。私から。これ以上。奪わないで。私をこれ以上。壊さないで。約束して?」
グリード:「もう素材もないし、イサラもいないから特別な支援はできないけど、情報面で困ったときに、助けてやる。」
グリード:「消えることはあっても居なくはならない。約束するさ。」
トリア:「わかった。信じる。」
グリード:「ぼくだけでも、君の成長を見届けて、イサラに話してやらないといけないからね。」
GM:君たちは、国の英雄になった。いや、受け継いだのだ。イサラから、トリアとそのパーティへ。
トリア:「私の成長を。どうしてまだ見れなかったんだ。そうお母さんに言わせてみせるよ。」
GM:君たちは、空を見上げ、煌々と照らす月を見て、人知れず涙した。
それが、手向けと言わんばかりにトリアは泣いた。何度でも泣いた。そして泣き疲れて。気絶した。
凍てつく風よどうかどうか止んで。終了。
ソードワールド2.0リプレイ「新米冒険者の輪舞」 赤い月の魔王 @ChaLL
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