俺の親友の秘密がかなり重大だった件について

プル・メープル

プロローグ

「今日もいい日だな……」

快晴の空を見上げてそう呟いたのは俺、志田しだ 一郎いちろう

最近はこんな天気が多くて気持ちがいいけれど、農家の人達は大丈夫なんだろうか。

土がカラッカラになってしまったりしていないだろうか。

そんな心配をしている今日この頃だ。

「いい日って……暑いじゃん……」

そんな俺の隣で暑さで半分溶けているような状態の美少年は俺の親友の江ノえのしま 紅葉あかば

ほんのりと赤色の混ざったような茶髪を腰の長さまで伸ばして一つにまとめているその姿は、その綺麗な顔立ちも相まって女子に見えなくもない。

俺も高校に入って初めて見た時は、男装している女子かと思った。

ボーイッシュって言うんだけな?

そういう系の女子だと思って話しかけてみたんだが、実は男だったという……。

あの時は失礼なことをしたと思う。

男子に女子だと思って話しかけるほど失礼なことは無いと思う。

それはホモじゃない人に「ホモですよね?」と真顔で聞くようなものだ。

それをしたのだから、嫌われるのも承知だったんだが、どうやら俺の懇親の土下座が功を奏したらしく、2年生になった今でも親友としていつでもそばに居ると言っても過言ではない。

紅葉とは話してて楽しいし、趣味も(約半分は)理解してくれる奴だから親しくなれたんだが、一年以上一緒にいても未だに慣れないことがある。

それが彼の『女っぽい行動』だ。

今も「暑いよ〜」と言いながら両手で顔に風邪を送っている。

体育の時は着替えを見られるのが恥ずかしいのか、いつも保健室で着替えているらしいし、その長い髪を小さくお団子のようにまとめて出てくる。

おまけに去年の水泳は全て欠席。

つまり俺は男同士の親友でありながら、紅葉の水着姿を見た事がない!

これは大問題だ。

あれだけの美貌を持つ紅葉の水着姿。

それは1枚でもいいから写真に収めて置きたい。

別に俺がホモだとかそういう訳じゃなくて、普通に尊敬するほどにイケメンだからな。

なかなか見られないその姿を永久保存版として保管したいという気持ちがあるのはきっと自然なことなのだ。

クラスの女子だって同じ感情を抱いているはずだ。

俺が変なわけじゃないはず……そうだろ?

とにかく、女子っぽい雰囲気を持った紅葉が女子っぽい動きをする度に、俺は心のどこでそれを意識していることを最近知った。

そして時々夢に出てくるんだ、女装した紅葉が……。

悪夢ではないが、あの時はつい飛び起きてしまったな。

親友でそんな姿を夢に見てしまうなんて、あの時の俺はきっと疲れていたんだな。テスト前だったし。

「あ、そうだ。疲れ果てているところ悪いが、今日の夕方、借りてた漫画返しに行くからな」

「ん〜、夕方ならいいけど……」

「なんだ?夕方までに何か用事があるのか?」

「いや、無いけど……」

どこかよそよそしい紅葉に対して疑問を残しながら、俺は帰り道を歩き出した。

それにしても今日は本当にいい天気だ。

こんな日には悪いことなんて起こる予感がしないな〜。

俺は無意識にそんなことを思い浮かべていた。

それがフラグであることも知らずに。

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