続きが読みたい、長くたのしみたい、大事に大事に、少しずつ。
なんてそんなふうに思う作品はたくさんあるとは思いますが、これは私のその典型でした。
ずっとどのようなレビューを書けばいいのか悩んでましたが、しかしやはり、こんな数文字程度しか書くことのできないレビュー機能で、好きな作品に対し言葉を尽くすことは、それこそ難しいことだなんて、無理やりに割り切ることにしました。
この気持ちは別日、別の形で消化します。
だからここでは簡潔に。
簡潔に、完結させます。
楽しく、心地よく、気分よく、小気味よく、色鮮やかな、そんなモノクロな活字世界が気持ちよかったです。
ありがとうございました。
物書きの人が数ある表現方法の中から小説を選んだ理由というのは、きっと大なり小なり言葉が好きだからなのだろうと思います。同じストーリーでも、文章の組み合わせや順番を工夫し、時には遊び心を加えることで、そのストーリーの魅力は増します。そしてそれは言葉が好きでなければできないことだと信じています。
僕は本作を読んで、こう思いました。
この作者、絶対、言葉が好きだろ。
本作は『金の斧と銀の斧』などの名で知られる童話を、現代が舞台のボーイミーツガールにアップデートしたものです。
主人公の束林蒼平くんは代々、木こり。ヒロインの小森瑞菜さんは代々、池の女神です。束林くんが池に斧を落としてしまった日からふたりは急接近し、校舎裏で秘密を共有する仲になります。でも小森さんは、ある悩みを抱えていて……というお話。
設定の時点でおかしみがありますが、それだけではありません。束林くんも小森さんも、どちらもおどおどしていて健気な少年少女なので、可愛いな~( ◜◡◝ )と思いながら読んでいけるのですが……そうしているうちにいつの間にかふたりの心の深いところに触れている自分に気づきます。小森さんの重大な苦悩。束林くんが出した答え。手に汗握る熱い展開と、愛、そして女神。それらを文章として紡ぐ、楽しげで強い、自由な言葉……。
作者さんが言葉が好きかどうかは直接聞いたわけじゃないのでわからないのですが、それでも、生き生きとした言葉選びの本作を読む中で、僕自身が言葉を更に好きになったことは確かです。あとおろおろしちゃう少年少女も好きになりました。可愛い。読んだら充実感があると思います。おすすめです。