エピローグ ~誰もが望んだ笑える明日~

 校舎の復旧は三日で終わった。



 

 流石フェルバン魔法学園、金だけは唸る程持っている。


 というわけで朝のホームルームなんだけど、まぁ召喚科やること無いよね。


「よーしお前ら、出席取る」


 そう言うライラ先生を一応見るファンタスティック馬鹿ども。


 聞かなくたってわかる、頭の中はとりあえず今日一日どうやって時間を潰そうかという事だろう。




 ま、自分もその一人だけどさ。




「の前に……転校生を紹介してやろう。入って良いぞ」


 何か前にもこの展開あったなと思いながら、ガラッと開かれる扉を見る。


「クックックック……ハーッハッハッハ!」


 ガラッという音は高笑いによって消え去った。そこにいたのは年端も行かないような少女だった。


 真っ白い肌に漆黒の長髪を持つ、人形のような少女。


 けれどその制服はどう見てもフェルバン魔法学園のもので。


「聞いて驚け見て叫べ! わらわの名は破滅と終末の化身、否邪神! イヴ・ワールドエンドなるぞ!」


 だめだ、何か聞き覚えのある名前だ。


「みなのもの、ひれ伏すがよい!」


 彼女は教壇の上にドンと乗ってから、何か聞いたような台詞を言い出す。


 これはあれですね、名付け親に問題があったパターンですね。


「あの。ライラ先生」

「なんだアル、文句あるのか」

「……エミリーとキャラ被ってます」


 うんうんと頷くクラスメイト達。流石にこのキャラ二人もいらない。おなかいっぱいです。


「言うに事欠いてそれか」


 という抗議は残念ながらライラ先生には届かない。そういう人ですよねわかってますって。


「アルフレッドオオオオオ! わらわの愛しの好敵ちゅっチュッ! 600年にもわたるプロポーズ大作戦にわらわの心はそなたのものじゃ! はー結婚しよ!」


 ピョンピョンと跳ねながら、俺の膝の上に座ったイヴ。もとい邪神。いやこっち系のキャラもですね、いい加減おなか一杯と言いますか。


「おいなんだこのガキ……」


 思いっきり睨みつけるエル。言い換えるとガンを飛ばす。


 自称俺の嫁怖いな離婚しよ。


「はっ、誰かといえば魔王、否もはや手垢がつきすぎて魔王(笑)といったところか……クックック、今日からアルフレッドのひざの上はわらわの特等席じゃ」

「あのー、後ろの席あいてますけどー、というかあなた召喚してないんですけどー」

「ハッ、何を言うかと思えば……あのクロードとマリオンの精神を食ってやったのじゃ、人間の思考回路をゲットしたわらわにこの程度造作もないわ」

「そっか、あの二人結構頭お花畑だったもんね」



 どうやら名付け親に加えて餌も悪かったらしい。


 完全に俺のミスだ、問題の先送りはするもんじゃないよね全く。


「ていうかアルなに冷静に話してるんだよ! つまみ出せよこいつをよぉ!」

「おーおーみっともないみっともない。まさしく六百年を生きた魔王(ババア)とはこのことよ……その点わらわは? 生まれたてっていうか? 生後一ヶ月っていうか? ぴちぴちっていうか?」


 幼児じゃねぇかという言葉は言わない。


「あの、さっさと後ろの席についてもらえませんか?」

「あ、ディアナ切れてる」

「おう任せろディアナ! こんな奴オレがぶっ飛ばしてやるよ!」

「魔王様、あなたもですけどそこあなたの席じゃないですよね?」


 なんだか入学したての時とは別の意味で居心地の悪い雰囲気に包まれる教室。


 しかしそれでも、それでも俺は救いを神に求める。邪神じゃなくて普通の奴。




 その願いは、叶った。


 救いの主は教室の扉をバァンと開けてやって来た。


「ちょっとぉ、召喚科の転校生の書類まだ生徒会に届いてないんだけどぉ! どうやってんのよ全く……こんな『新』生徒会長の私を困らせようたってそうは行かないわよ!」

「あ、チョロチョロビッチ新会長助けてください」


 バァン! 勢いよく扉を閉める、繰り上げで会長になったチョロチョロビッチ先輩。




 はいはい神様なんていないいない。




 と、ここで教室の空気に耐えられなくなった残りのクラスメイト達が一斉に俺の顔を見る。


 はいはい俺のせい、なんて言葉がつい過ってしまうが本当にそうなのも事実だから。


「先生!」


 先手必勝。勢い良くそして元気良く挙手をする。


 俺から言える事なんて殆どないが、やるべきことはわかっている。


 だから叫ぼう声の限り。






「魔王と邪神が隣にいるので……早退してもいいですか?」

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Fラン生徒は元大賢者 ~先生! 召喚魔法で魔王が来たので早退してもいいですか?~ ああああ/茂樹 修 @_aaaa

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