第3話 消えゆく光 後編

中央城下町は静かである。

リリー宅には起きている者が誰も居らず、既に静まり返っている。

午前3時頃の事。薄暗い城下町には憲兵 以外誰も居ない。

一方、中央城下町から少しかけ離れた場所に佇む刑務所に.....

逃走しているアマンダが姿を現した。


「おい。起きろ。現役バリバリの囚人さん。」

アマンダは開いている牢の中に入っては

ベッドに横たわっている一人の少女に話しかけた。

「......アマンダか?」

その少女はアマンダに背中を向けたまま返事をする。


少女の名はエミル。西部内戦でかつてアマンダと共に活躍した軍人である。

「何の用さ。まさか、またアノ要件じゃぁ無いよな?」

「いや、アノ要件だよ。」

エミルは溜め息を一息。そして一言。

「何度も言うが....貴様のその依頼は承られない。」

するとアマンダは怒り狂って叫んだ。

「 今、この国で何が起ころうとしてるか分かるのか!? 軍が何をしようとしているか.....分かるのか!?」

「知らないね。貴様は今、軍に追われているな? 」

「だからなんだ!?」

「貴様と協力してまた軍に反発し、牢に居る期間が長くなるのはゴメンさ。」

「軍は.....この国に.....酷いことをしようとしている....」

「無理だ。何回も言わせるなよ。」

「......この帝国が....滅ぶ...何としても....王を殺さなくては....」

「暗殺と? バカ言え。王を暗殺しては生きて牢に入れると思うなよ。」

「私は......知っている....!! この国の真相を! 軍の陰謀を!」

「中二病臭いことを言わんといい。お前と戦友だからと、そんな無理な願いは聞けん。」

「....そうか。残念だ。実に、遺憾だ。」

そう言い残すと、アマンダは牢を出た。そして、帰って行った。

「私が協力するとでも思うなよ。」

エミルは小声で呟いた。


夜が明け、朝日が登り出る。

早朝8時半。軍は早くも動き出した。

王城や中央軍の指令部を中心に、アマンダを捜索。

頂点である王からは、銃殺許可が出された。

城下町の住民には外に出ないよう呼び掛ける。

町は、騒然となる。


瑠璃川も泊まっていたリリー宅から飛び出て、現場へ駆けつけた。

「酷いことを.....」

瑠璃川とアルベルトはアマンダから殺られた憲兵の死体をマジマジと見つめていた。

「瑠璃川。アマンダは爆発系の魔術を得意としている。」

「だよなぁ。」

「この憲兵も....爆発による焼死だ。」

「クソッ.....醜い真似をしやがってよ......」

ドカン!

すると突然、近い距離から爆発が聞こえた。

「あそこだぞ! 行ってくるから....!」

瑠璃川はそう言い残して現場へ走っていった。

「あぁ! 勝手な事を....」

アルベルトも、瑠璃川を追いかけていった。


「ちっ....左脇腹がっ....」

アマンダは城下町の路地裏での戦闘にて憲兵から一発撃たれたそうだ。

「おいおいおい。逃げやがってよ。」

「!?」

アマンダが後ろを振り向くと、瑠璃川の姿があった。

「あぁ....爆発音あのが目印になったかぁ....」

「ハハハハハハハ! マヌケめ! もう逃げる事は許さんぞ!」

「くっ...!!」

アマンダが方向転換して走り去ろうとするが、アルベルトも現れた。

.....挟み撃ち状態である。

「コノヤロウ!」

アマンダが手を真上にかざすと、上にあった水道管が破裂した。

ザザァー

水道管から水が滝のように流れ落ち、皆 びしょ濡れである。

「おいてめぇ何しやがるオイ!」

「さぶい....」ガクブル


「これでも くたばらんか?オラ!」

アマンダは男口調で叫ぶとスイッチが入ったライターを空中に投げ出した。

すると、続けてアマンダが両手のひらを水に浸すと、ニコッと笑った。

その瞬間。

ドカーン!

今までと比べ物にならない大きな爆発音と爆風が辺りをどよめかせた。

「ぐはぁっ?!」

「あれは....水素爆発の魔術を唱えたわねぇ....」

瑠璃川とアルベルトは吹き飛ばされた。

その間に、アマンダはまたもや逃走した。


その日の夜。アマンダは先程とは異なる路地裏に姿を現した。

「あと....魔法陣は1つのみ.....」

「オイ。もう見えているぞ。」

「!?」

瑠璃川とアルベルトである。

「さっきはよくも水素爆発を....傷口がヒリヒリするわよ。」

「さてと......何を企んでいるか話してもらおうか。あぁ?」

「お前らは分かってない!....この国が! 何を企ててるか!」

「はぁ?」

瑠璃川が眉間にシワを寄せる。

「軍は....何をしようとしているのか.....!」

「何を馬鹿げたことを言ってるのよ。」

「うるさい!」

そう言うと、アマンダは両手のひらを二人の方へと向けた。しかし。

「遅いぞ!」

瑠璃は猛スピードでアマンダに駆け寄り、両手を掴んで彼女を投げ飛ばした。

「一度してみたかったんだよ! 路上で袖釣込腰!!」

「おぉ。ソコで柔道を出すとは....」

なぜか分からないが、アルベルトが感心している。

「ガッ!」

路上に打ちつけられたアマンダは声を上げた。

続けてアマンダは、アルベルトに攻撃を仕掛けた。

アルベルトはその攻撃を避けて拳を食らわせる。

「このっ...!」

アマンダは仕返しにと懐からナイフを取りだし、アルベルトの軍服の右袖を斬った。すると。

「なっ....!?」

右袖を斬られ、アルベルトの素肌が見える。アルベルトの右腕には....

「傷.....?」

アマンダが驚いた。

少し考えたあと、アマンダは呟き始めた。

「ん? 待てよ.....瑠璃川は転生してここに来た.....アルベルトの右腕には大きな傷.....まさか。お前ら二人....!!」

「....」

二人は黙りこむ。

「瑠璃川を現実世界に帰そうとして失敗したな!」

続けてアマンダ。

「転生者を現実に帰す禁断の魔術・還元魔術を使いやがったな!?」


.....そう。その昔、瑠璃川がここに来た頃の事。

アルベルトは瑠璃川を現実に帰そうと試みる。

その為には、魔術史上禁断の方法・還元魔術を用いらなければならなかった。

二人はその魔術を唱えた。試みは失敗に終わった。

還元魔術に失敗すると、帰そうとした一人が犠牲になるという。

瑠璃川は、偶々に覚えていた魔術・賢者の魔術を使いアルベルトの死を

無くすことに成功した。

しかし、アルベルトの死は免れたが彼女の右腕に大きな傷が付いた。

二人にとっては辛い過去である。

「おい.....アマンダ。テメェ、余計な事を言ったな?」

瑠璃川はうつ向いて言うと、アマンダを思い切り殴る。

アマンダは吹き飛ばされる。

今度はアルベルトが近くにあった鉄骨をアマンダ目掛けて飛ばす。

アマンダの腹に命中すると、鉄骨は貫通した。

「ヌッ....だが、もう遅いぞ....魔法陣は既に5つ発動している....!!」

二人にはどう言う意味かわからなかった。

アマンダは鉄骨を抜くと、少し辛そうにして歩き出した。

「ん....鉄骨を抜いても死なない....?」

瑠璃川は疑問に思った。


アマンダはまた別の路地裏に移動。壁にそりながら歩いている。

と、

「んん...!?」

アマンダの先には、一人の男が立っていた。

「おまえ...王の野郎か...!?」

立っていたのはケンヴェイ帝国の王である。

「ふっ ハハハハハハハ! 覚悟ぉ!」

アマンダはいきなり笑いだすと、拳を握りしめて王に突っ込んでいった。

「ァァァァァァァァ!」

王は冷静に見極め、刀をスッと抜いた。


気づいた頃にはもう遅かった。

血飛沫が辺りに飛ぶと、アマンダはゆっくりと地に落ちた。

血液が、コンクリートを濡らした。




あとがき


ご覧頂いてありがとうございました。意味が分からない所もありますが、

物語が進むごとに理解できるシステムになります。

今後とも、よろしくお願いいたします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

瑠璃川の魔術師ライフ【異世界での非日常生活】 ふに豆 @mame_funifuni-1107

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ