第2話 消えゆく光 前編

深夜。王城の城下町には幾つもの明かりが灯る。

パトロールカーであった。瑠璃川は、侵入者の女を捕まえたのである。

「いやぁ。助かりました。ご協力ありがとうございます。瑠璃川さん。」

「あぁあぁ。別にいいよ。また何かあったら.....ね?」

憲兵が満面の笑顔で言うと、瑠璃川は照れくさくなって うつ向いた。

と、そこにアルベルト中佐が駆け寄ってきた。

「おい! 瑠璃川!」

「あ。アルベルトじゃん。」

「アンタ。語尾に中佐くらい付けたらどうなの....?」

「まぁ。ともあれ。アレは? 報酬金は?」

瑠璃川がゲスい顔で要求する。

「あーあー。分かってますよ。報酬の手続きをしますので。暫くお待ちを。」

「へいへい....ところで、中佐。あの侵入した女って何者なんだよ。」

アルベルトは薄暗がりになって言った。

「あの女も....かつてこの帝国の軍人であったのよ。」

「何.....!?」

「でもね。今から5年前に起きた西部内戦をきっかけに、軍を脱退して....」

「脱退して....?」

「それから女は反社会運動に参加して.....この国の政治の仕方を批判してるの。」

「何がしたいんだよ。あの女。」

「知らないわ~。」

「まぁ。捕まえた事だし。一件落着。帰って寝るか。」

と、その時....

ドカァーン!

「ん?ナンダ?」

「え.....?」

二人は同時に反応した。爆発音が聞こえた。

黒煙が辺りを包み始める。

二人は慌てて爆発のした方へと足を運ぶ。


「どうしたぁ!....って。」

複数の憲兵らが地面に倒れている。

「アワワワワワ....なに? エ? なに? 何が有ったのですかぁ!?」

中佐は まず 落ち着け。

「女が.....逃げたァ...」ゴホゴホ....

アホか.......


「瑠璃川。女の名前が把握できました。名前はアマンダ。元・帝国軍の軍曹。」

「おぉ~。中佐。珍しく仕事が早いんじゃぁないの?」

「う、うるさい! それより.....この資料を見てください。」

アルベルトは瑠璃川に一枚の資料を手渡した。

「アマンダは5年前に起きた西部内戦で活躍した軍人です。」

「へぇ。」

「二つ名は『人間兵器』。内戦で多くの西部民族を犠牲にしました。」

「二つ名がエグいな.....」

「彼女は魔術師であります。中でも爆発の魔術は高威力です。」

「あぁ。さっき逃げられた原因も、爆発魔術なんだな.....」

「そうなりますね.....続けてお願いですが、瑠璃川。」

「ん......?」

「今日、夜が明けて日が出たら、軍で彼女の大捜索を実施します。」

「それに協力してくれ、と。」

「流石は瑠璃川。読みが早い。」

「ハハハ。」

「仮に彼女を見つけた際なんですが。処刑を許可します。」

すると、瑠璃川はうつ向いた。

「殺す事など.......ゴメンだ。」

「えぇ......っと。」

アルベルトは困惑した。

辺りに重い雰囲気が流れる。と、そこに。

ガラガラ....

「よっ。アルベルトちゃん。遊びに来たよ~。」

部屋に入ってきたのは、アルベルトの部下であるリリー中尉である。

「お! これは噂の瑠璃川君!? 転生してきた人だぁ! 握手。お願いしていいかい?」

「あぁ....えと。どぞ。」

ガシッ!

「おぁ....!?」

女のクセに、力が強い。

「おぉ~。瑠璃川君! はじめまして。私はリリー。中尉ね。宜しく。」

「あぁ、はい。宜しく。」

アルベルトはただ単に腕を組んで苦笑いしながら二人を見つめていた。

(あぁ~。また面倒なヤツが来たなぁ。)

「おい。リリー。用が無いならさっさと仕事に戻れ。」

「あぁ。ハイハイ。戻りますよ。"用が済んだら" ね?」

「はぁ?」

リリーは瑠璃川に身を寄せると、懐から何かを取り出した。

「ん? ナニソレ.....ってぇ!?」

リリーが取り出したのは一枚の写真。

瑠璃川はその写真に目をむいた。

「ねぇ。今日は私の家に泊まってきなよ! ホラホラ! この写真見てよ!」

写真には3人写っている。その中の一人が、リリー中尉。

私服姿で、裕福な笑顔で写っていた。

「あぁ~。はいはい。中尉の家族さんですね?」

「おぉ~。ビンゴ~♪ ........正解。」

中尉と並んで写っているのは夫だろうか。

その二人の間には、小さなお嬢ちゃん。

「ん? この女の子。娘さん?」

「そーうです! 可愛いでしょ? ねー。」

「あぁ、うん。凄く可愛.......あ、うん。良い子だね。」

「あぁ。言っときますよ、中尉。瑠璃川、ロリコンなので。」

そこにアルベルトが口を挟んできた。

「アァン? 何を!? 俺がロリコンだとぉ!? 」

「さっき可愛いって言おうとしましたよね?」

「知らんな。」

「ホラすぐ ごまかす。」

「もう勘弁してぇ......」(笑)



「......誰?」

小さなお嬢ちゃんが言う。

「あぁ。この人はね。私の知ってるひと~。」

中尉がそう言うと、その夫が口を開いた。

「俺りぁ大工をしてる。宜しく。」

「あぁ、はいぃ。」

「おにぃちゃん。」

「ん。ああ。良い子。」

瑠璃川は幼い子供が可愛くて言葉が見つからなかった。


それはしょうがない。ロリコンだもの。

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