ウサギとカメ(新解釈版)

賢者テラ

短編

 あるところに、ウサギとカメがいました。


 ウサギはカメに言いました。


「君は足が遅いよねぇ。競争したら、きっとボクの勝ちだね」


 カメは、ウサギに言い返しました。


「そうかなぁ。そんなの、やってみなくちゃ分からないと思うけど」


 ウサギは鼻でフン、と笑ってこう提案しました。


「それじゃあ、向こうの山のふもとまでどちらが先に駆けつくか、競争だ」



 


「ハハン。楽勝楽勝~」


 ウサギは持ち前の足の速さで、カメを引き離します。


「こんな競争、やる前から結果分かってるじゃん——」


 かなり先まで来てしまったウサギは、少々疲れが出ました。


「ちょっとひと休みしても、十分勝てるだろ」





 カメは、遅かったけど休まずに歩き続けていました。


 そしてついに、ウサギに追いつきました。


 何と、ウサギは油断して眠り込んでいました。


「あらあら」


 カメは、この時とばかりにウサギを置いて、先を急ぎました。



 


 目覚めたウサギは、しまったと思いました。


「エエッ、マジ!?」


 俊足で駆けましたが、あとの祭りでした。


 カメは、すでにゴールに到達していたのでした。





 すると、ウサギとカメの前に神様が現れました。


 ……ウサギよ~ カメよ~


 二人は返事をしました。


「はい、私たちはここにおります」


 まず、神様はウサギに語りかけました。



 ……ウサギよ。

 自分より弱い者を侮ってかかるとどんな目に遭うか、身をもって知ったであろう。

 これを教訓にして、これからはどんなに楽勝の勝負であったとしても——

 全力を尽くして、のぞむようにするのじゃ。



「分かりました、神様」



 次に、神様はカメに語りかけました。



 ……カメよ。

 お前はウサギより足の遅いことを承知で、よくあきらめずに頑張った。

 しかし、今回のことで、お前を手放しでほめるわけにはいかない。

 なぜなら、お前は寝ているウサギを見て黙って通り過ぎたからじゃ。

 フェアな勝負で勝とうと思うなら、ウサギを起こすべきである。

『ウサギくん、寝ていてもいいのかい?  寝過ごして負けるなんて、それは悔しいでしょ?』

  もしそれでお前が負けても、ウサギはこう思うだろう。

『カメ君が起こしてくれなければ、ボクはきっと負けていた。黙っていれば勝ってただろうに。勝負にはボクが勝ったけど、カメさんは偉いや。足なんか速くなくても、ボクよりすごいところがあるんだなぁ』 とな。



「……そうですね。確かにあの時、ウサギが寝ているのをいいことに自分が勝つことしか考えませんでした。それで勝っても、やっぱりフェアじゃないし、何より私自身今それほどうれしく感じていません。反省します」



 そこで神様は、二人に提案しました。


 私の指示するコースで、もう一度勝負せよ、と



 


 さて、二人はスタートしました。


 でも、ウサギはカメにいいました。


「カメさん。ボクの背中にお乗り。神様が指示してきたコースは恐ろしく長い。ボクはね、君とフェアな勝負をしたいんだよ。だから、ある程度の距離までボクと一緒に行こう」


「ありがとう、ウサギさん」


 こうしてカメを背負ったウサギは、長い長い丘を駆けました。




「あらら、川だ」


 泳ぐのが苦手なウサギは、困りました。


 背中に乗っていたカメは、ウサギに提案しました。


「今まで本当にありがとう。今度はボクが君を背中に乗せるよ。だってボクは、泳ぐのが得意だからね!」


 二人がやっと川の向こう岸に着いた時——


 神様が現れてこう言いました。



 ……ここがゴールじゃ。

 よく頑張った。

 二人とも自分の得意を生かし合ったからこそ、ここにたどり着けたのじゃ。

 よってこの勝負、同着で二人とも勝ちじゃ!



 それから、二人は仲良く暮らしましたとさ。

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ウサギとカメ(新解釈版) 賢者テラ @eyeofgod

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