第3話
俺は親友が好きだった。
そんな俺の気持ちを知りながら、あいつは俺に、あいつの妹が俺を好きだと言った。
あいつに俺がお前の妹と付き合ってもいいのかと尋ねると、
「もし、あいつとお前が結婚したら俺たち親友で兄弟だよな。」
そう言って笑ったのだ。
俺にはうなずく以外の選択肢など存在しなかった。
あいつの妹はいい子だった。
俺みたいな男に適当につき合われていい子じゃないと思った。
そう思うのに俺の中のあいつに対する気持ちはどんどんと膨れ上がり、どうすることもできなかった。
あいつの妹と別れたらあいつとの関係が断たれてしまいそうで、申し訳ないと思いながらも、手放してやることが出来なかった。
けだるい時間が流れていく中俺はあいつの妹を酔いに任せて無理矢理抱いてしまったのだ。
彼女の中にあいつの面影を見、あいつが女だったならと考えたせいなのかもしれない。
謝ろうと思ったが、彼女はそのことが無かったかのように振る舞い、俺に謝罪をさせてくれなかった。
そうしていくばくかの時間が過ぎたとき、彼女の妊娠を知らされた。
正直なところ、子供が欲しいとは思えず中絶をしてほしかったが、あいつに軽蔑されたくなくて、俺は覚悟を決めた。
彼女に結婚を申し込んだのだ。
「本当に後悔しないの?」
彼女は俺にそう訊いたが、そう訊く彼女の目があいつにそっくりで、意外とうまくいくのではないかと思ってしまった。
「後悔なんかしない。大切にするよ。」
俺はそう言った。
そして彼女は俺の妻になり、しばらくすると子供が生まれた。
生まれてきた子はまるで俺とあいつの子のようで、考えたこともないほどに愛おしい。
思いがけないほどの幸せを感じていた。
俺が彼女を抱く時はいつも後ろからで、あいつのことを夢想する。
すると恐ろしいほどに俺のものは硬く大きくなり、激しく妻を愛することができるのだ。
俺はこの憐れな妻を愛していないわけではないと思う。
最近になって俺は、あいつの方に傾いていた愛情の天秤が、わずかずつではあるが妻の方に傾き始めているのを感じるのだ。
近い将来、俺は妻を正面から抱く日が来る予感がしている。
その時は俺とあいつがただの友人に戻る日だろう。
妻と付き合い始めた日から獣に変わってしまった俺だが、いずれ近いうちに人間に戻る日が来るのかもしれない。
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このお話はここで終わりです。
読んでいただきありがとうございました。
山月記情話 @snp
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