第2話

 妹があいつを好きになったのはすぐにわかった。

俺はあいつが好きだった。正直女に生まれてきたかったと思った。

それほどにあいつが好きだった。

ある日妹に訊いた。

「あいつが好きなのか。」と。

妹は頷いた。

俺はあいつに妹の気持ちを伝えた。俺にとって妹は俺の身代わりだった。

あいつは戸惑った顔を見せた。

「○○と、俺が付き合ってもお前は嫌じゃないのか。」

「いや、このままもしお前とあいつが結婚でもしたら、俺たち親友で兄弟だよな。」

 逡巡するような様子を見せたが、結局あいつは

「お前がいいのなら。」

そう言い、あいつは妹と付き合い始めた。


職場の飲みで、したたか酔っぱらって帰ってきた夜、妹が泣きながら帰ってきた。

妹の身体からはあいつの香りがした。

知らぬ間に妹の腕をつかんでいた。


どうしてそんなことをしてしまったのか。


俺は妹を組みしいた。

無理やりに下着を取り去ると、激しい抵抗を見せていた妹の身体から力が抜けるのがわかった。

妹の中は奴から放たれたものでしとどに濡れ、わずかな抵抗すら見せなかった。

奴から放たれたものと俺のものが混じりあうのだと思うと、妹を犯しているというのに、興奮と陶酔で胸は高鳴り、これでもかというほどに激しく腰を振り、やがて俺は吐き出した。

自分のしたことが恐ろしくなった俺はそのまま妹から体を離すと酔いに任せて寝入ったふりをしたのだ。

目元に乗せた腕の隙間から妹の様子をうかがう。

最初泣いていた妹の涙はいつの間にか止まり、思いつめたような目をしていたが、妹は俺を責める様子も見せずに、フラフラと立ち上がると自分の部屋に帰っていった。

 翌朝、妹が俺を責めることはなかった。

取り返しのつかないことをしてしまった俺はそのことが恐ろしく、昨夜のことは何も覚えていないようなふりをしたのだ。

そんなふりをしているうち俺はあのことが夢だったのではないかと感じ始めていた。

確かに、妹を犯したというのに。


それからしばらくして妹が妊娠したようだった。


 俺は妹に子供が出来たのかと尋ねた。

妹はかすかに頷いたようだった。

俺は妹に訊いた。

「あいつと結婚したいか。」

妹は睨み付けるように俺を見て今度ははっきりと頷いた。

 俺は妹が怖くなった。

妹は俺が覚えていることに気付いてる。それでもなかったことにする気なのだ。

ひょっとすると俺の子の可能性もあるというのに、そのことはなかったことにしようとしているのだ。


妹はあいつと結婚した。

そして妹は子供を産んだ。この子はいったい誰の子なんだろう。

俺の子なのかそれともあいつの子なのか。

このことをあいつに話すことも、妹に聞くことも俺にはできなかった。

妹を犯したあの日俺は獣になった。

いや、本当はあいつと出会った時からそうだったのか。

今となってはもうわからない。


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