6

江入えーりくん、おはよう」

「……おはよう」

 目線、誤差数cm。

 頭頂部には無の空間。背後に回れど無の空間。

――ねこみみモード、完全終了のお知らせ。

「あはは……。うん、今朝すっかり」

 つまり、ただの美少女と。

「あ、えーとね? あの……色々良くしてくれたお礼に、猫カフェ……回数券、とか」

……律義な奴。さすが学園一の美少女、といったところか。呼び名の所以は見た目だけにあらず。

 同級生女子(学園一云々を差し置いても)のしっぽを散々いじり倒した身、むしろ迷惑料を請求されてもいいくらいなんだが――いや、されても実際困る。

「……いる?」

「要る。ありがとう。帰りに使う」

「――えっと、それでね? ……良ければご一緒させていただきたく……」

……煮え切らないような態度はそれか。気を使われるに越した事は無いが、使われすぎても気持ちが悪い。

「別にいいけど――」


――『ぱあっと明るくなる』ってこういう表情をいうんだろうな。

「あ、あとでLINEするねっ」

 駆けてった。……なんなんだろう。

 まあいいか。

 猫カフェ、少しだけ――いつも以上に楽しみ、……かもしれない。

……とりあえず、学校一の美少女が自分じゃ掴めなかったしっぽに触れられることを祈ろう。

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学校一の美少女が朝から幼女でねこみみ(+しっぽ)モードだとは思わないんだが? らと @meganecat

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