俺は本作の主人公ではあるが、この物語は俺のものでは無い。 (練習作品)

@kabanosyousetu

第1話

そこはもの凄く心地の良い場所だった。薄暗くて少し狭かったからかな。枕とかタオルケットはなかったけど寝心地がよかった。

俺の名前は花島愛信(はなしまあいのぶ)、

高校2年生。ストーリーのナレーションは俺のことをハナって呼ぶよ。

ちなみに今、俺はこの黒いひし形の壁の部屋に浮いている。高さは3m弱、横の長さは5m弱、と言ったところかな。ちょうど今起きたところなんだ。

ハナはよく分からない自己紹介を終わらせ欠伸をしながら眠たい目を擦り、寝起きの頭で考えた。

「いや、ここどこや。」

見たことない足場の無い部屋、てか自身は浮いてるし……。当たりを見渡しながら、間違いなく今から俺は異世界転生的な世界に行くんだ。あぁそうか、こういう系統のラノベは読もうとしなかったがなるほど、異世界転生系は作者が設定組みやすくなるし世界観も好き勝手できる。非常に合理的だ、これには流石の相澤先生もニッコリだ。などとくだらないこと(考えていると右下の面から黒髪のスーツ?姿の高身長イケメンが現れた。ハナはすぐに察した、こいつが本作の主人公か……と。

「目を覚ましたか。」

男は低い声で言った。

頷くハナを見て男は続けた

「お前も質問がたくさんあるだろう、出来るだけ返すから質問してくれ。」

有無を言わせないかと思っていたハナは少し驚きながらも質問を投げかけた。

「あなたは?」

「君たち人間が言うところの神様かな。僕は創造神。この世界を創った。」

「ここは?」

「役職的なところかな。」

「俺はこれからどこに行く?」

「僕が創った世界に行ってもらう。みんなは"こっちの世界”って読んでるよ。もちろん拒否権はある。嫌なら閻魔のとこか、屍として元の世界に帰ってもらうよ。」

「……俺はやっぱり死んだの?」

「うーん、正式には死んではいないね。こっちの世界には何パターンの人間がいるんだよ。1・生きてはいるが、深海、地中や瓦礫の下などの人の手では見つけることが出来ない場所で行方不明者になった人間(判断はこちらがするが)。 2・不遇の死を迎えた人間。 3・こっちの世界で生まれた人間。

君は1に該当した人間で、選考神が連れてきた。」

「……、俺はもうあっちの世界には生きて戻れないの?」

「生きて返すことはできる。君を連れてきた場所、つまりあの海にね。でもそうすれば考えて分かると思うけど君は確実に溺れ死ぬ。」

「……そう。」

もう、戻れないのか。家族にも友達にも、茜にも……。しょぼくれるハナを無視し、男は続ける。

「質問はもう内容だな。こちらから少し付け足す。まず、この世界では第三者からの危害がない限り死ぬことはない。つまり自殺や飢えで死ぬことはない。それと、この世界では能力の付与が行われる、強力な能力ならそれなりの代償、弱点もつくだけど……。君は能力を好きに選べる方なんだけど欲しい能力はあるかい?自動付与もあるけど。」

「神経……かな。」

「神経?」

男は一瞬表情を曇らせたがすぐに続けた。

「うん、」

「そっか、君の能力は"神経”で決定、弱点として10分以上1人でいると死ぬ、ことになったよ。」

男は手に持っていた書類に書き込みながら言った。

なんで手書き……と思いながらも

「死ぬの……?」

と、聞き直した。

「言ったろ、強力な能力ならそれなりの代償がつくって。多分、君自身が考えていた使い方が強力だったんだろう。」

「…………」

そう言うと創造神は1粒のタブレットを取り出してハナに渡した。

「それを食べた瞬間、君はこっちの世界に飛ばされる。それと同時に能力も使えるようになるよ。どこに飛ばされるかは分からないからくれぐれも気をつけて。」

そう言うと男、もとい創造神は右下の面から沈むように外に出ていった。


1人残されて、もう一眠りしようかと思った。でも、同時に早く行かなきゃ、とも思った。掌でタブレットを転がしてみた。なんのかは分からないけど、答えはつからなかった。当たり前だよな、と思いながら口にホイッといれてひと噛みふた噛み。

口の中に柑橘系の味が広かり、俺の視界は目を瞑ったかのように再び暗くなった。





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